愛の世界 の商品レビュー
アイルランドのビッグ・ハウスを舞台にした独特の作品。分かりにくいのはどうも訳者のせいではなさそうだ(解説で訳者自体が難解さを説いている)、誰か映画化してくれないかな。 20世紀イギリスを代表する短編の名手らしいので、今度短編集を借りてみよう。
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国書刊行会のボウエン・コレクションは全3巻で完結。これが完結編……でいいのだろうかw タイトルから真っ当な恋愛小説を一瞬想像してしまうが、そこはエリザベス・ボウエン、一筋縄ではいかない。イヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』を彷彿とさせる郷愁の物語だった。『郷愁』が何に対す...
国書刊行会のボウエン・コレクションは全3巻で完結。これが完結編……でいいのだろうかw タイトルから真っ当な恋愛小説を一瞬想像してしまうが、そこはエリザベス・ボウエン、一筋縄ではいかない。イヴリン・ウォーの『ブライヅヘッドふたたび』を彷彿とさせる郷愁の物語だった。『郷愁』が何に対するものかは色々あるだろうが、個人的には古き良き英国、大戦前の時代へのノスタルジーなのではないか、という気がした。『ブライヅヘッドふたたび』にもそういうところがあるしね。 ボウエンの邦訳が増えることを祈って……(但し、「日ざかり」だけは吉田健一訳で復刊してね!)。
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死んだ青年兵士の残した恋文を巡る、3人の女性の揺れを描く。あまり完成度の高い小説とは思われなかったが、ところどころ言葉の持つ喚起力の冴えに、息を呑む場面があった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
「甦った思い出をもたらす緊張感に人は疲れ果てる。肉体はともかくあるだけの細胞が消耗する。真実が露わになると、薄くなっていた布地は擦り切れる。その日の午後、ほかの者たちが眠りにつき、フレッドは自分の仕事場という聖域に引きこもり、リリアはベンチに戻り、清澄さが残っていないか探してみた。しかし、庭園は今朝がたはあった名残はもうなくなっていた。潅木は自らの物語に幕を下ろし、日時計が独りそびえていた。乾ききった色彩だけが、あざ笑うように消え残っている。」 文章は決して読みやすいものではない。けれどもずっしりと重く、かつ洗練された文章で、私は好き。 物語の最後の一文が私が好き。 森林の描写や光加減の描写が、とても気に入った。
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