清張歴史游記 の商品レビュー
ヘレニズムと仏教、相容れないふたつの文化の伝道は時の権力者、為政者の人民統治政策として利用されたと考えれば得心が行く。 九州に生まれ育った著者の北国への憧れと旅、小説の着想。 自分の行き先を非常に心配した若い頃に見た月、従軍中、朝鮮半島で見上げた月、ベトナム戦争直中のハノイの満月...
ヘレニズムと仏教、相容れないふたつの文化の伝道は時の権力者、為政者の人民統治政策として利用されたと考えれば得心が行く。 九州に生まれ育った著者の北国への憧れと旅、小説の着想。 自分の行き先を非常に心配した若い頃に見た月、従軍中、朝鮮半島で見上げた月、ベトナム戦争直中のハノイの満月、イスラム革命前夜、テヘランから飛び立つ飛行機の窓から見えた名月。 魏志倭人伝、飛鳥時代の西方宗教、戦国武将の経営術、日本の官僚政治史……。 昭和50年代、NHK教育TVにて放送された『テレビコラム』、地方での文化講演会、ラジオでの対談で語られた歴史随想を書籍化。 「松本でございます」 で始まる東西の古代史の虚構と真実を検証するための“推理”。 専門の考古学者ではないからこその発想と想像力、そして洞察力は最近とみに流行のトンデモ歴史特集より納得できる内容です。 第3章の「飛鳥時代の西方宗教」の中で「“日本書紀”の斉明天皇の記事には他の天皇には見られない色々な不思議なことが書かれている」として、その不思議な記述がいくつか紹介されています。 その内のひとつ「斉明天皇のお葬式を山の上から鬼が見ていた」という一文。 これは梨木香歩氏の著書『丹生都比売』で、主人公である幼い草壁皇子が“おばあ様の葬列を見ている鬼がいた”と怯える描写にも使われてます。
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