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勢 効力の歴史 の商品レビュー

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2020/01/27

動と静の二元対立を超えて、現実を現実のままに認識し理解することは可能であろうか。作者は問いかけた。そしてその問いを解ける鍵は、中国の「勢」の概念にあるという。 政治思想、詩、画、書道、小説……作者は様々の分野を横断して、歴史的に駁雑な意味や使い方を持ってきた「勢」に共通している...

動と静の二元対立を超えて、現実を現実のままに認識し理解することは可能であろうか。作者は問いかけた。そしてその問いを解ける鍵は、中国の「勢」の概念にあるという。 政治思想、詩、画、書道、小説……作者は様々の分野を横断して、歴史的に駁雑な意味や使い方を持ってきた「勢」に共通している概念の軸を描こうとした。中国の行動原理は何であろうか。中国人に馴染んでいた現実・歴史感覚とは何か。中国と西洋の考え方に、どのような「重要な差異」があるのか。こうした疑問を感じた方は、ぜひ本書をご一読いただければと思います。 本書と「開発」と関連するところは、開発援助のアクターとしての中国を理解することだけにあるわけではない。中国の哲学・美学から示された、目的論や因果律から切り離された説明原理は、本書のみそであり、我々に現実を捉える視点を与えてくれる。すなわち、「実在するのは、これまでも、そしてこれからも、作動する相互作用だけであって、現実はそのたえざるプロセスにほかならない」のである。そして、それに根付いているのは、「働いている勢いに沿うことで、それに運ばれながらも、勢いを自分のために働かせる」という中国的な実践理性であり、順応主義である。 本書をはじめて読んだ時、すぐにハーシュマンの可能性主義や、ブルデューの実践理論を思い出した。西洋思想の根底にある二元対立を様々な角度から問い直すことは、学問の世界における一種の「勢」でもあり、現実に近づくための一方法論ともいえよう。 (東京大学大学院新領域創成科学研究科 博士課程 汪牧耘)

Posted byブクログ