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多面体と宇宙の謎に迫った幾何学者 の商品レビュー

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3件のお客様レビュー

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2016/08/20

幾何学者コクセター(1907ー2003)のすばらしい評伝. 数学が抽象化,代数化される流れの中で,図形の持つ対称性を生涯を通じて研究し続けたコクセターの歩みが,本人や周辺の人への綿密な取材によってうかびあがる.その精緻さは本文がおよそ350ページなのに対し,読み応えのある脚注が9...

幾何学者コクセター(1907ー2003)のすばらしい評伝. 数学が抽象化,代数化される流れの中で,図形の持つ対称性を生涯を通じて研究し続けたコクセターの歩みが,本人や周辺の人への綿密な取材によってうかびあがる.その精緻さは本文がおよそ350ページなのに対し,読み応えのある脚注が90ページあるということにも表れている. しかしながら,この本は専門書ではなく一般向け.高次元多面体,鏡映群,コクセター図形などの概念をあまり数式を使わずに上手にわかりやすく説明してある.著者はフリーランスのライターでこの本が最初の本だそうだが,しっかり内容を理解して,それを伝える力量には非常に感心させられた.サイモン・シンの「フェルマーの最終定理」を思い出させるすばらしさ. 第二部でコクセターの仕事のいろいろな分野での応用が述べられていて,それは建築,美術(エッシャーとの交流),結晶学,果ては宇宙論にまで及ぶ. 幾何学に興味のある人はもちろん,対称性を含む科学・芸術に関心のある人には,一般書にしてはちょっと値段は高いが,おすすめである.

Posted byブクログ

2010/11/14

学問としての多面体の研究を行っていたコクセターさんってのがいて、孤高なわけである。他の誰もこんな研究をしていない。正20面体は3次元上に存在するものだけれど、正多面体が4次元で存在するのはどれか?みたいなことを考えるわけである。そして、そのような研究が、とんでもなくいろいろなこと...

学問としての多面体の研究を行っていたコクセターさんってのがいて、孤高なわけである。他の誰もこんな研究をしていない。正20面体は3次元上に存在するものだけれど、正多面体が4次元で存在するのはどれか?みたいなことを考えるわけである。そして、そのような研究が、とんでもなくいろいろなことと関連を持って、しかも本質をなすということがわかる。グーグル時代にあって、価値観もなにもグラフ構造によって決定されるのだなどとしたり顔で語るわたしのような若輩者に、本質的な美しさとか対称性といったものがなにか?ということを語るのである。

Posted byブクログ

2009/12/22

本の名前は刺激的だが,副題の方がより正確な内容を示しているーKing of Infinite Space, Donald Coxeter, the Man Saved Geometryー つまりCoxeterの伝記が中心である. 宇宙の関連性については,最後に述べているだけなの...

本の名前は刺激的だが,副題の方がより正確な内容を示しているーKing of Infinite Space, Donald Coxeter, the Man Saved Geometryー つまりCoxeterの伝記が中心である. 宇宙の関連性については,最後に述べているだけなので,この話題に興味のある方はがっかりするかも.あと数式が本文中にはほとんど存在しない(代わりに参考文献を巻末に付録してある). 今日,大学の教養は解析学と線形代数学が中心であり,幾何学はほとんど学ばない.この本を読むと幾何学を学びたくなる.特に幾何学の美しさを本書では強調している.今度,Coxeterの「幾何学入門」やEukleidesの「Eukleides原論」を読んでみよう.

Posted byブクログ