福沢諭吉と中江兆民 の商品レビュー
著者による「近代日本思想論」シリーズの第一巻で、福沢諭吉と中江兆民の思想について考察をおこなっている本です。 著者はマルクス主義の立場に立つ哲学者であり、本書でも福沢の近代化論やアジア論に対しては批判的な観点から検討をおこなっています。他方で、兆民の唯物論にかんしては、弁証法に...
著者による「近代日本思想論」シリーズの第一巻で、福沢諭吉と中江兆民の思想について考察をおこなっている本です。 著者はマルクス主義の立場に立つ哲学者であり、本書でも福沢の近代化論やアジア論に対しては批判的な観点から検討をおこなっています。他方で、兆民の唯物論にかんしては、弁証法に対する認識に到達していないことを批判するとともに、ルソーの影響のもとで兆民が打ち立てた民主主義の立場、とりわけその「道徳的自由」の概念について、一定の留保を置きつつも評価しています。 やはり著者の立場から予想される結論を大きく超えるような議論はなかったのですが、福沢および兆民の基本的な主張についてていねいな紹介がなされており、両者の思想について学ぶことができました。
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