愚者が出てくる、城寨が見える の商品レビュー
久しぶりに、バイオレンスな小説を読んだ気がします。なんというか、黒社会を描いた80年代後半から90年代前半にかけての香港映画みたいな、もしくは今ほど有名になる前の三池崇史監督作品のVシネマというか。ある程度、物騒な話だろうとは思っていたものの、作品と著者に対しての予備知識を全く持...
久しぶりに、バイオレンスな小説を読んだ気がします。なんというか、黒社会を描いた80年代後半から90年代前半にかけての香港映画みたいな、もしくは今ほど有名になる前の三池崇史監督作品のVシネマというか。ある程度、物騒な話だろうとは思っていたものの、作品と著者に対しての予備知識を全く持たずに読んだので終盤は驚くばかりでした。かつてTV東京木曜夜9時に放映されていた映画のような、万人受けはしないけれど好きな人には病みつきになる魅力を持った作品だと思います。
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中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。 他者訳の...
中条昌平が岡村孝訳の『狼がきた、城へ逃げろ』をタイトルからして誤訳であるして、自分がもっとマンシェットの雰囲気をと、ペンを執り直し、改めて訳したものだそうだが、見た限りでは、訳者なんていうレベルではなくマンシェットのラディカルなパワーしか感じることができなかった。 他者訳のタイトルを批判しながら「愚者」を「あほ」と読ませたり「城塞」を「おしろ」と読ませたり、いかにランボオの中原中也訳をイメージしたからと言ってマンシェットをわがものにしたというのは、傲慢に過ぎる。だからフランス語の専門家は嫌いだ(元フランス語専攻学生の嘆き)。 とは言え、この本がマルレーヌ・ジョベール(あの『雨の訪問者』のヒロインですね)の主役、セバスチャン・ジャプリゾ脚色で映画化されていることは知らなかった。訳者が酷評しているが、見ていない人間にそんなことを言うな、解説で! とは言え日本未放映の映画だからどっちでもいいか。『いかれた女を殺せ』というこの訳者が勝手につけた未邦訳映画タイトルは、むしろ岡村孝的な訳のように思うんだけど。 なお、いずれにせよ、絶版で読まれる機会の薄い本書が広く紹介され、新たにマンシェットのファンを生み出すきっかけを作ってくれた訳者・版元の功績は大きい。これを機に、中条さん、どんどんマンシェットを翻訳できないのでしょうか? 版元が売れると判断してくれない限り難しいとは思うのだけれど、本というのは売れ行きだけの文化ではないのだからねえ。
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普段、ロマン・ノアール系統は読まないのに 妙に文章が「入って来る」のが楽しかった* どうも、こういう文体が好きらしいと 気づきましたとさw
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警察なしで、憲兵隊なしで我々は生きられるのか?全能者である神の大いなる人の戦い 諸価値の崩壊はなにを意味するのか? 終わりの時には困難な時期が来ることを悟りなさい。 我々はなにを見ているのか? 神のサインを見だんだよ。
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素晴らしくスタイリッシュな作品。 他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。 ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが そういう人は放っておいて問題無い。 無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。 シンプルだからと言って人物が記号化し...
素晴らしくスタイリッシュな作品。 他のハードボイルド小説が野暮で芋っぽく見えるほどだ。 ただ、あまりに淡泊で読みごたえが無いと思う人もいるかもしれないが そういう人は放っておいて問題無い。 無駄の無い文体は読み手にも洗練を要求するのだ。 シンプルだからと言って人物が記号化していたりはしない。 登場人物の衝動的で意味の無い行動が人物に深みを与えている。 元精神病患者の主人公、敵役の殺し屋、 内面と行動が伴わずただ暴力だけが積み重なっていく。 一度味わうとまた戻って来ざるを得ない独特の世界がある。 映画などとは違う「文章」の楽しみに溢れた小説。 ストーリー自体はわりとありふれたものだけれど そぎ落とされた言葉の力は骨太な魅力で迫ってくる。 単なるハードボイルドとは一線を画す実験作とも言える。 文章を愛する人ならば食わず嫌いをせずに是非一度読んでいただきたい。
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まるで映画を見ているよう…登場人物の余計な描写や心情が一切排されると、小説はこう言う感覚を生むのか、と衝撃を受けた。ジュリーの精神疾患の危うさと同じくらいギリギリの所にいるその他の登場人物たち。ペテールを抱えて、写真で見たお城に向かってひたすら逃げるジュリーに姿は鬼気迫り、精神に...
まるで映画を見ているよう…登場人物の余計な描写や心情が一切排されると、小説はこう言う感覚を生むのか、と衝撃を受けた。ジュリーの精神疾患の危うさと同じくらいギリギリの所にいるその他の登場人物たち。ペテールを抱えて、写真で見たお城に向かってひたすら逃げるジュリーに姿は鬼気迫り、精神に異常を来した女性が執拗なまでに追い続けた結果だったとしても、ペテールが救われた事に変わりない。
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主人公たちが殺し屋たちから命からがら逃げる逃げる。彼女らが通った後は死屍累々(かな?)。 余計な心情も入ってなくて、スカッと読めました。
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"暗黒小説の傑作"を銘打つだけの価値充分にあり。 おかしいのだけれどおかしくない。狂ってるけれど狂っていない。 作品全体に流れる潔いまでにの乾燥感にウオオ!
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