乾山晩愁 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
光輝くものだけが、この世に存在するわけではない。光があれば必ず、影がある。影だけではない。光の周りに、柔らかな色彩で温かみと膨らみのある存在があって、光を支えているのではないだろうか 表題作の乾山晩愁はじめ、いずれも絵師に関わる物語だ
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時代もテーマも雰囲気も異なる短編5篇、共通するのはいずれも絵師が主人公であり、絵画と政治は深く繋がっていて、その関係が絵師の人生を翻弄するという点。「絵師とはな、命がけで気ままをするものだ。」(探幽) 好きな作品は『雪信花匂』。狩野家の政争に巻き込まれた雪の人生。愛を選び、誰か...
時代もテーマも雰囲気も異なる短編5篇、共通するのはいずれも絵師が主人公であり、絵画と政治は深く繋がっていて、その関係が絵師の人生を翻弄するという点。「絵師とはな、命がけで気ままをするものだ。」(探幽) 好きな作品は『雪信花匂』。狩野家の政争に巻き込まれた雪の人生。愛を選び、誰かを想い絵を描く。想いと葛藤に苛まれながらも強い意思と共に名を轟かせていく一人の女流絵師の美しい叙情的作品。中でも兄の彦五郎のキャラクターが深みを出している。放蕩息子でありながら妹と親友のために動くことができる。その後の事件を経て、次の『一蝶幻景』に登場した時は胸熱だった。悲劇ではあるものの結果的に恋は成就している本作、読みながら心の何処かにもっと大きな悲劇であってほしい自分がいたのは事実…
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どの世界にいても自分と戦い、周りと戦う。 それが刀でなく絵筆でも。 どう自分らしい生きかたをするだとか、潰されない生きかたをするのかを模索していく過程が非常に面白い。
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珍しく尾形光琳ではなく、弟の乾山を主役とした表題作から始まり、狩野永徳、長谷川等伯、清原雪信、英一蝶といった絵師達の物語が続く。安部 龍太郎の『等伯』を読むと永徳は完全に悪者だが『永徳翔天』を読むとあら、良い人じゃないと思った。 お寺、美術館巡りがますまず楽しくなる。
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前に書いたレビューが何故か消えている…もう一度。 尾形光琳はよく知っているけれど、その弟の乾山はあまり知らなかった。器が有名だよね、くらいの知識。 その乾山を主人公に据えた話。 語り口も端的で美しく、色々な人の思いも昔の日本的で上品で、読んでいて心が洗われるよう。内容はドロドロ...
前に書いたレビューが何故か消えている…もう一度。 尾形光琳はよく知っているけれど、その弟の乾山はあまり知らなかった。器が有名だよね、くらいの知識。 その乾山を主人公に据えた話。 語り口も端的で美しく、色々な人の思いも昔の日本的で上品で、読んでいて心が洗われるよう。内容はドロドロだけど。
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尾形乾山のことを調べていたら、辿り着いた小説。 乾山だけではなく、江戸時代の絵師を題材にした五編からなる本書は、読みながら江戸時代にタイムスリップしたような感じをひしひしと感じる臨場感がたまらない。 狩野派や土佐派などをはじめ、名前は聞いたことがあっても、長い江戸時代においてそ...
尾形乾山のことを調べていたら、辿り着いた小説。 乾山だけではなく、江戸時代の絵師を題材にした五編からなる本書は、読みながら江戸時代にタイムスリップしたような感じをひしひしと感じる臨場感がたまらない。 狩野派や土佐派などをはじめ、名前は聞いたことがあっても、長い江戸時代においてその関係性は意外と知らないことが多い。こういう物語形式で展開されると相関関係がわかりやすくていい。 直木賞作家だった葉室さんという初めて知った作家。。。これからの作品も過去の作品ももう少し読んでみたいなと思わせる異才!
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私は相変わらず歴史がよくわからなかったので、絵画の話と、漠然としか理解できなかったが、葉室麟のファンはかなり多いらしく、私の大叔母は歴史好きで葉室麟ファンであり、うちにあった葉室麟の小説を喜んで持って帰るほどに面白い!面白い!を連発しておりました!!! やはり、見る人が見れば面...
私は相変わらず歴史がよくわからなかったので、絵画の話と、漠然としか理解できなかったが、葉室麟のファンはかなり多いらしく、私の大叔母は歴史好きで葉室麟ファンであり、うちにあった葉室麟の小説を喜んで持って帰るほどに面白い!面白い!を連発しておりました!!! やはり、見る人が見れば面白いのね!! 私はどーも時代背景がわからないままでついていけませんでした(´-`).。oO へーそんなことがあったのねー くらいの感じでした。時代背景もう少し勉強しようかな。 葉室麟の時代小説は割とマニアックな時代を追うものが多く、歴史小説の中でもとっても新しい切り口らしいし!!!
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戦国時代から江戸時代までの、絵師と呼ばれる人たちの物語。権力者と天才が出会う時、芸術が花開く。苦悩はつきものだけどね。
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絵師と画家が同じものか分からない。 が、以前、ある画家の絵を見て、それを通して画家の目に映る世界に触れて、確信したことがある。 画家は、狂気を見ている。 この話に登場する絵師たちも、同じ世界を見ている気がする。 特に、永徳は。 美しいものを描けるのは、汚いもの、地獄を知っているか...
絵師と画家が同じものか分からない。 が、以前、ある画家の絵を見て、それを通して画家の目に映る世界に触れて、確信したことがある。 画家は、狂気を見ている。 この話に登場する絵師たちも、同じ世界を見ている気がする。 特に、永徳は。 美しいものを描けるのは、汚いもの、地獄を知っているからこそなのか。 そうだとすると、絵師は修羅になるのではなく、修羅が絵師になるのかもしれない。
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戦国から江戸時代にわたって絵師たちの姿を描いた作品を5編収録した短編集。 絵師に限らず芸術家は、自由気ままに自分の作品を作り上げている自由人というイメージだったのですが、この作品に出てくる絵師たちというものは、 自分の作品を認知されるために、時の戦国武将や権力者に取り入った...
戦国から江戸時代にわたって絵師たちの姿を描いた作品を5編収録した短編集。 絵師に限らず芸術家は、自由気ままに自分の作品を作り上げている自由人というイメージだったのですが、この作品に出てくる絵師たちというものは、 自分の作品を認知されるために、時の戦国武将や権力者に取り入ったり、また絵の一派での内部抗争や狩野派・長谷川派の争いなども描かれていて、芸術家といってもやっぱり大変なんだな、 と読んでいてしみじみ思いました。 収録作品はそれぞれにドラマ性は感じられたのですが、いずれも短編なため歴史的背景なんかも書いていると、あっという間にページ数が足りなくなってしまうんですよね…。 そもそも自分自身の知識も何とか狩野永徳や長谷川等伯の名前が分かるくらいだったので、歴史的背景の説明がほとんどピンと来ず…。そのため各短編のドラマに入り込めませんでした。 自分みたいに歴史に不勉強な人が読むのではなく、歴史が好きな人に読んでもらいたい本です。 第29回歴史文学賞受賞作「乾山晩愁」収録
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