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ジョン・ガブリエルと呼ばれた男 の商品レビュー

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2014/06/19

イプセン5作目。笹部氏の解釈も含まれているのだろうか、それだとしてもイプセンはイプセンである。イプセンにおいての最晩年の作品らしい。ジョン・ガブリエル・ボルクマンに自分を重ねているのだろうか。  あとがきを読むと、イプセンの人生と作品とは表裏をなしているという。彼の境遇が当時の作...

イプセン5作目。笹部氏の解釈も含まれているのだろうか、それだとしてもイプセンはイプセンである。イプセンにおいての最晩年の作品らしい。ジョン・ガブリエル・ボルクマンに自分を重ねているのだろうか。  あとがきを読むと、イプセンの人生と作品とは表裏をなしているという。彼の境遇が当時の作品にそのままにじみ出ているそうだ。結婚が牢獄のようであり、当時の芸術家よろしく、親子ほど年の離れたお嬢さんと恋愛のようなものを繰り返す。あくまでも擬似であったよう。この作品は愛のない野望に目がくらんだ主人公が、結局自身の夢に振り回され、身を持ち崩し家庭も散らし、自身の命までなげうってしまう。欲に取りつかれた狂気により破滅していく男の叫びである。人間の渇望の一面を描くならば芸術ともいえる。その疾走感はやはりイプセンである。雪降る冬の凍てつくような最後であるが、ボルクマンの生の余熱は消えずに漂う。  真実と虚偽。イプセンの作品に付きまとうテーマであろうか。人形の家では女性の自立を歌うようなテーマが斬新であったが、野鴨の中核であったこのテーマが彼の人生の底流をなすように感じる。彼だけではない、我々すべてがそうなのだ。イエスは、真理が我々を自由にするといった。真理とは何かと問う人生である。 14.6.10

Posted byブクログ