文明への問い の商品レビュー

梅原猛(著者)

2020/03/21

梅原猛 「 文明への問い 」 近代文明の人間観を批判した本。哲学の分野で仏教の思想可能性を広げている意味で面白い。

論点
＊近代文明＝西洋哲学＝技術文明社会＝欲望社会 の人間観は限界
＊仏教思想(仏性、無常、自然との調和)に基づく人間観で超克

仏教思想に基づく人間観
＊人間の生とともに 人間の死を見つめる
＊自然はわれわれの母〜われわれは そこから生まれ、そこへ帰る

近代文明とは
＊止まらない汽車〜人間に止める術はない〜汽車はどこにいくかわからない〜不安のなかに乗客(人間)がいる
＊近代文明は 生産力の向上が 唯一の価値
＊人間の欲望→人間の自然征服→公害へ→自然と調和する手段へ変える必要あり

ヨーロッパのニヒリズム(ヨーロッパ思想における無)
＊ニーチェ、ドストエフスキー
＊ヨーロッパ思想の例外→ プラトンーキリスト教世界の崩壊＝価値の虚無化→ニヒリズムへ

ドストエフスキーの人間観
＊美しい心の中にも悪魔の心がいる、悪魔の心の中にも優しい心がある→人間の魂の中は矛盾
＊現代人の恐ろしさ＝神がいない→宗教や道徳もない→殺人してもいい＝イワン
＊愛の精神が世界を救う＝アリョーシャ

欲望論
＊マルクス(食欲)、ニーチェ(権力欲)、フロイト(性欲)
＊3つの欲望がどう関係するか 3人とも関係意識がない

2014/02/10

さまざまな機会に発表された小論、時評、エッセイなどを収録しています。大学紛争、公害問題、女性論、未来論など、そのときどきの話題から説き起こして、文明論的な考察へと議論が展開されます。

人間の死の問題から目を背けてきた西洋の機械技術文明は、いまや危機に瀕していると著者は指摘し、生命についての深い思索を紡いできた東洋の英知から学ぶべきだと主張します。

西洋対東洋という文明史的な構図が、少し乱暴ではないかという気がします。

2012/09/20

表紙裏
西洋の機械技術文明はなぜ滅亡の危機に瀕しているのか？死の問題を欠落させ、自我を絶対化したデカルト以来のヨーロッパ思想が抑圧してきたものは何だったのか？東洋の叡智にもとづいた新しい生の哲学を探る著者が、教育、科学技術など、多様に変化しつづける現在の諸問題に取り組んだ論考集。解説・中沢新一