森林がサルを生んだ の商品レビュー
自然人類学の観点から、人間の文化の発祥の秘密にせまる試みです。 著者は人間を「存在自体が不思議な生物」といいます。そのうえで、「人類だけが持っている諸特性、たとえば善と悪、愛と憎しみ、社会を支えるさまざまな高度なしくみ」について、「人類も生物の一種である以上、それらは生物の進化...
自然人類学の観点から、人間の文化の発祥の秘密にせまる試みです。 著者は人間を「存在自体が不思議な生物」といいます。そのうえで、「人類だけが持っている諸特性、たとえば善と悪、愛と憎しみ、社会を支えるさまざまな高度なしくみ」について、「人類も生物の一種である以上、それらは生物の進化の産物として理解できる性質のもの」だとする立場をとり、その謎を解明することをめざしています。 サルの社会についてフィールド・ワークをおこなってきた著者が、サル学の基本的な知見を紹介しつつ、そうした視点から人間の行動を説明しようとする試みがなされており、おもしろく読みました。本書のような方法によって人間の文化的行動を完全に解き明かすことははたして可能なのかという疑問をいだきながらも、人間と自然との関係について考えるための興味深い議論が提供されており、たのしみながら読むことができました。
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