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大地(下) の商品レビュー

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2019/06/25
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 農民たちの群像を描くゾラの長篇。 『ナナ』と同様、序盤から大量の人物が次々に出てくるため、氏名を覚えるのが苦手な読者は、人物一覧のメモを取りながら読んだ方が良い。  発表当時から本作は「わいせつだ」との批判に包まれたそうだが、もちろんエロ小説とは違うものの、農民たちのまったく遠慮しない・剝きだしの性欲がリアルに描かれている。  そして小説のテーマは「土地の所有」である。ゾラはいつものように描写したい対象の世界をじっくりと取材し、農民たちを破局へと駆り立てる最大の要素を「土地」に見いだしたわけだ。  現在の日本の農家では、このような土地所有権の争いはあまり無いようで、ちょっと想像しにくいのだが、当時のフランスの農村ではこうであったのかもしれない。  そして、ゾラの長篇がいつもそうであるように、人々の破局を目指して、狂気じみた焦燥を伴いつつ、物語は終盤にどんどん加速する。  獣性をもった人間たちの、この「破滅への遺志」の迫力ある描出が、ゾラの作品群の特徴であり、私にとっては大きな魅力である。  この作品では、人物たちはいっそう卑猥かつ残酷であり、誰一人幸せな死を遂げることができない。作品中の或る夫婦などは親族殺人を2度も犯しながら、捕まることもなくのうのうと生き続けるのだ。  この作品は残酷さにおいて際立っているが、そのような残酷さと、農民たちの土俗的なエロという点、白土三平の『カムイ外伝』を思い出した。白土三平はゾラを読んでいたのだろうか。読んでいたような気がする。

Posted byブクログ