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巷談 本牧亭 の商品レビュー

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2013/05/25

三越名人会、燕雄の寛政力士伝には聴き惚れた。すごいなすごいな、桃川燕雄。福松と同じ「どうでぇ、という顔ンなって」エヘンと誇らしい気持ち。でも実声を知らないから、彦六の正蔵の声で聴いて(読んで)いた。 「甘酒」の章、切実。 「実アすねえ」の湯浅喜久治が本牧亭で不幸な死に方をしなけれ...

三越名人会、燕雄の寛政力士伝には聴き惚れた。すごいなすごいな、桃川燕雄。福松と同じ「どうでぇ、という顔ンなって」エヘンと誇らしい気持ち。でも実声を知らないから、彦六の正蔵の声で聴いて(読んで)いた。 「甘酒」の章、切実。 「実アすねえ」の湯浅喜久治が本牧亭で不幸な死に方をしなければ、もっとよかった… p.263の「恋」という字を「戀」に鉛筆書きで直しが入っていた。そうだね、ここは「戀」だねぇ。

Posted byブクログ

2012/05/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

まず、「雨の降ることに感謝し、晴れて、喜び、風が吹いてもありがたいと思い、雪が降っても、ああそうか、と思う」そんなふうに淡々と、ただ「芸」にのみ生きる講釈師「桃川燕雄」の端然とした佇まいが魅力的だ。 変わりゆく昭和の東京の片隅で、ただ一カ所、講談の定席としてその灯を守りつづける「本牧亭」がこの「ものがたり」の舞台。「生まれたときからの寄席の娘で、それがもう血になっている」と自他ともに認めるおかみさんの「おひで」をはじめ、寄席の常連や「芸」のこと以外はからっきしダメ人間といった風情の芸人たちの愛すべき姿が、ここではまるで子供がだいじな「宝物」を抱きしめるかのように、やさしく描かれていて感動する。そうだ、そうなのだ、寄席はたんなる劇場(ハコ)ではない。寄席とは、さまざまなひとがそれぞれに、ちいさな喜びや悲しみによって結ばれたとてもとても人間臭い、ちいさな「町」のような場所なのだと、この「ものがたり」は教えてくれる。 ある日、若い興行師「湯浅」は、思いを寄せる娘義太夫「桃枝」のたっての希望で生まれて初めてローラースケート場を訪れる。カラフルな洋服を身にまとった若者たちに混じって、大音響で流れる流行の音楽にのって颯爽と滑る「桃枝」。その姿をひとり2階の見学席から見守りながら、「湯浅」はてっきり自分と同じ世界で同じ空気を吸っていると信じていた「桃枝」が、あたかも変わりゆく東京の風景のように自分からどんどんと遠ざかってゆくような気分にとらわれ、その恐怖とも孤独とも言いがたい感情におののく。そしてその焦燥が、やがて「湯浅」の人生を思わぬ方向へと狂わせる。 移りゆく時代の波に翻弄されながらも、不器用に自分らしく生きようとする心やさしき人たちの姿がここにはある。

Posted byブクログ