在日の恋人 の商品レビュー
高嶺格さんのバックグラウンドは知らず、 図書館でタイトルが気になって読み始めました。 読んでびっくり。 その文体。洞察力と思考。たぶん作者は天才。
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〈在日一世の持っている、具体的な「日本」への不信と嫌悪、祖国への強い想い、それはもはや、日本で生まれ育った在日二世がリアルに感じるものではありえず、むしろそれを、「情熱の欠如」というコンプレックスとして抱えている。「在日」として不完全である自分、純粋にアンチの存在ではありえない自...
〈在日一世の持っている、具体的な「日本」への不信と嫌悪、祖国への強い想い、それはもはや、日本で生まれ育った在日二世がリアルに感じるものではありえず、むしろそれを、「情熱の欠如」というコンプレックスとして抱えている。「在日」として不完全である自分、純粋にアンチの存在ではありえない自分、そのコンプレックスを丸ごと抱えることこそが、二世であるKのリアリティであり出発点であることを、僕は知った。〉 うーん、唸ってしまう一文だ。シビれる。 ここまで鋭く、在日二世や三世の実情を表現した文章があっただろうか。私は知らない。 こういう文章に触れると、ああ、本を読んでよかったなぁ、と思う。 2019.1.22.
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大好きな作品、ベイビー・インサドンのドキュメント。 六本木クロッシングで出会ったのは2010年? 横浜美術館のとおくてよくみえないが2011年。 そろそろ、また作品に触れたい。
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森美術館での展覧会(2010年)でみた作品「Baby, Insa-dong」に惹かれて購入。 凄かった!という一冊。 著者高嶺は「あとがき」で、「大切なことであればあるほど、他人と分かち合うのは難しい」と記している。そしてマンガンとの間に存在した「通い」は、ようやく不可能で、「...
森美術館での展覧会(2010年)でみた作品「Baby, Insa-dong」に惹かれて購入。 凄かった!という一冊。 著者高嶺は「あとがき」で、「大切なことであればあるほど、他人と分かち合うのは難しい」と記している。そしてマンガンとの間に存在した「通い」は、ようやく不可能で、「この本の膨大な誌面をもってしても伝えられない」と。 それでも(一見淡々とつづられた)この一冊に、うならされることは大変多かった。発信力に満ちている一冊。 感じたことは色々で、かつ奥深くて、それをここに書き連ねることは十分できないと思うからもどかしい。 それでも少なくとも、あぁ、高嶺のような文章が書きたい、とも思う。 高嶺は、子供ができたことで、将来を「家族」という単位でイメージするようになったという。 その他にも、結婚という制度への納得に係る記述など、「家族」に係る思索がところどころにみられる。 一方、国益という概念の危うさについても指摘されている。一般市民がこの言葉「国益」を知ったかぶりで口にするようになったらおしまい、とも言う。その通りかもしれない。 高嶺は恋人Kとの結婚をアボジが認めてくれた時、アボジを「娘の幸せに心を砕く、一人の父親」として見出したという。そして、だからこそ、「乗り越えた」と。 他の国との関係、より、他の"人"との関係のほうが、どれほど本質的なことだろうか!
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最初から最後まで、高嶺格である。高嶺格の日記である。 現代美術作家である著者が、京都の洞窟を自らの作品へと造り変えていく中で、在日韓国人の彼女のアイデンティティと真っ向から向き合う。日本人でも韓国人でもない特異なアイデンティティと向き合う中で、形にならないモヤモヤとしたものを形に...
最初から最後まで、高嶺格である。高嶺格の日記である。 現代美術作家である著者が、京都の洞窟を自らの作品へと造り変えていく中で、在日韓国人の彼女のアイデンティティと真っ向から向き合う。日本人でも韓国人でもない特異なアイデンティティと向き合う中で、形にならないモヤモヤとしたものを形にしていく。 こねくり回したような理屈をこねくり回したものとして受け止められるような屈折した人ならば、きっと素直におもしろく読めるはずだ。こねくり回した理屈をさらにこねくり回したかのような著者の造形作品がいかに理屈をこねくり回して作られているのか、その経過をこねくり回して理解するのに手っ取り早い著作である。
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六本木クロッシング2010で「ベイビー・インサドン」を観て、とても心に残ったのでこの本を手に取りました。 「常識とされていることへの疑い」を持って人種とか国なんて関係なしに相手個人を肯定する姿勢で書かれた優しい文章が、心に刺さりました。
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こんなに腑に落ちた文章はない。 複雑な感情を言葉に変換し整理整頓してページに並べてくれた。 実際の著者はエナジーがあふれていた。
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読みながら何度か泣いた だって 純粋なんだもの すごく すーごく この感情をうまく表現出来ないのは何故かを考えながら再読します
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「あなたのその、在日に対する嫌悪感は、なんやの?」 と難詰する「在日の恋人」に対する答えに窮した僕は、 「僕に、はたして「在日に対する嫌悪感」はあったのか? 答えは、「なかった」。僕は、それはなかったと思う。しかし、彼女にそれを言わしめる何かがあったのだとすれば、思い当たるこ...
「あなたのその、在日に対する嫌悪感は、なんやの?」 と難詰する「在日の恋人」に対する答えに窮した僕は、 「僕に、はたして「在日に対する嫌悪感」はあったのか? 答えは、「なかった」。僕は、それはなかったと思う。しかし、彼女にそれを言わしめる何かがあったのだとすれば、思い当たることが2つある。1つは、まるで自分みずからが日本人の代表であるかのような顔をして、「在日はいったい、具体的にどんな補償をすれば気が済むの?」と思った憶えがあること。この発想を続けるかぎり、日本はまた同じ過ちを繰り返すだろう(絶対に)。もう1つは、いつまでも「在日」にこだわるKを見ていて、薄気味悪いと思ったことがあること。「自分探し」は誰でもやるし、一生かけて真剣にやるべきものだと思っている。にもかかわらず、「在日」が真剣に「自分探し」すると、日本人をうしろから刃物で切りつけるような結果にたどり着くんじゃないか? 僕だって、日本人だというだけで在日に刺されるんじゃないか? この恐怖心を持っているかぎり、また同様に、日本は道を誤る。これから自分探しを続けなくてはいけないのは、むしろ僕のほうなのだ」 という反省から始まるプロローグ。今どき、在日に刺される可能性を恐れる中年男性の方がよほど薄気味悪いんですけど! その後の展開がどれほど鬱陶しいか懸念されたけれど、全体としてはアーチストである著者が在日コリアンが設立・運営するマンガン博物館の洞窟を借りてそこで「在日の恋人」というアート作品を作るプロセスが、一言日記風にわりとあっさり描かれていくのが中心。恋人の攻撃を受けて血みどろな応酬をするという韓流的不毛展開もなく、冒頭の思いを深めたり修正したり広げたり投げ出したりしていくような、ある意味正統派な展開でもなく、それなりに勉強しつつも著者は木を削ったりしていて、これも手だなとよく分からないけれど感心した。 また「在日の恋人」も、自分は民族にこだわり過ぎていたかもしれないと、冒頭の戦闘態勢からすると肩透かしなぐらいほとんど脈絡なく反省(あるいは著者が恋人の気持ちの変化をその程度にしか表現できなかったということかな)。ともあれ最期は結婚式、出産シーンとなり、よくわからないうちに丸く収まる。 ここまでは、自費出版? と思いつつも、基本的には著者は真面目でいい人で穏やかだしいいんじゃなーいと、わりとポジティブに読んでいたが、 「僕は今後、大文字の「在日」をテーマとして作品を作ることはないかもしれない。それがなぜかはっきりわからないけれども、在日は、もはや自分が「眺める」対象ではなく、血肉となったからだと言えると思う」 という著者のあとがきで、けっこう台無しー。そんな簡単に「血肉となった」なんて言ってしまえるかね。 そもそもからして、在日コリアンが恋人であるということ特殊っぽくみなして、メインテーマにするのって、今どう? と思ったりもするのですが。
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アイデンティティの問題は前世紀からの大きなテーマだが、 実際日常生活の中で自分のアイデンティティの所在を 意識することはあるだろうか? まだ、アイデンティティとは何なのかもわからないが、 アイデンティティとは、日々更新していくものであり 同一性といえども固定されたものではないの...
アイデンティティの問題は前世紀からの大きなテーマだが、 実際日常生活の中で自分のアイデンティティの所在を 意識することはあるだろうか? まだ、アイデンティティとは何なのかもわからないが、 アイデンティティとは、日々更新していくものであり 同一性といえども固定されたものではないのではないか? と思った。 難しいことは抜いて、日々の日記として読んでみても面白い。 それに彼の作品〈God Bless America〉も面白い。
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