調書 の商品レビュー
主人公を何物ととらえるのかに苦戦する一作です。前半までは主人公の独白調かと思っていると、どうも記された時系列はバラバラで、後半は主人公の名前や出来事の登場する記事、手紙、調査報告書なども掲載され、どうやら作品全体が主人公をどう規定するのかと言う事に苦戦しているという印象です。海の...
主人公を何物ととらえるのかに苦戦する一作です。前半までは主人公の独白調かと思っていると、どうも記された時系列はバラバラで、後半は主人公の名前や出来事の登場する記事、手紙、調査報告書なども掲載され、どうやら作品全体が主人公をどう規定するのかと言う事に苦戦しているという印象です。海の風景が印象的で涼しげです。(宮月)
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キラキラと黄金色に輝く自分にとってのバイブル。 信じられないかも知れないが、その文字列、エクリチュールが自分にはほんとに輝いてみえるのだ。美しい。 暗い色に沈んだ湖面に、朝の陽射しが一瞬間白く割くようにして走る、眼の眩むような一筋の閃光。瞼の裏の乱反射。 そんな感触。 アダ...
キラキラと黄金色に輝く自分にとってのバイブル。 信じられないかも知れないが、その文字列、エクリチュールが自分にはほんとに輝いてみえるのだ。美しい。 暗い色に沈んだ湖面に、朝の陽射しが一瞬間白く割くようにして走る、眼の眩むような一筋の閃光。瞼の裏の乱反射。 そんな感触。 アダム・ポロ。ありゃ俺だ。
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よく分かってないけど、読み終わって、いい意味でざわざわする感覚と、もしかすると個人個人のどうしても埋められない感覚を描いている小説なのかなぁ・・・。精神が錯乱している主人公のアダムと自分はそう遠くない場所にいるような気がした。
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この小説は、アダム・ポロという、特異なやり方で世界を捉える一人の男のそのやり方、いわば世界に対する彼の感覚についての、調査書のような小説であると言っていいと思う。アダムを、特にその眼を通した時、世界のあらゆる境界は溶け始める。 人、動物、自然、人工物、内と外、さらに過去や未来と...
この小説は、アダム・ポロという、特異なやり方で世界を捉える一人の男のそのやり方、いわば世界に対する彼の感覚についての、調査書のような小説であると言っていいと思う。アダムを、特にその眼を通した時、世界のあらゆる境界は溶け始める。 人、動物、自然、人工物、内と外、さらに過去や未来といった時間さえ、アダムにおいては、それぞれの区切り、保っていたあるべき位置、秩序を容易に失い、何か大きな一つの概念に丸め込まれる。何もかもが交換可能で、一が同時に全であるような、だが混沌とはしていない、前とは別の秩序を持つ概念に。 それがアダムの見る世界であり、またそれは時々作中で神とも呼ばれる。そして当のアダム自身ももちろんそこに含まれている。世界を見ているアダムは世界そのものになる。アダムは牝ライオンであり、犬であり、白ねずみであり、大勢の赤の他人でもあり、テレビですらあり、神であり、世界なのである。 だが他の人々にとっては、彼はただの人でしかない。そうとしか見えない。見え方の違う者たち――アダムと人々との会話は、いつも噛み合わない。そうして自身の見え方を人々に説いたアダムは、人々によって、ある烙印を押されることになる。だが訳者も解説で言うように「伝達の不可能性」がこの小説で最重要なものなのではないと自分も思う。 やはりアダムの特異な感覚と、それを写しとる多彩な表現の数々や文章構成が、この小説を圧倒的なものにしているのは明白だ。それらの一々を一読で把握しきるのは自分にはとても不可能だったが、眩暈と強い快感を伴う読書だった。また必ず読み返すと思う。
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クレジオは昨年のノーベル文学賞受賞者です。 そのクレジオの処女作が本作になります。 難解です。 理解できません。 でも、読み始めると嵌ってしまうような感覚に囚われます。理解しなくても構わないものだと思います。この文章は小説というより詩を読んでいるようなものです。否、もっといえ...
クレジオは昨年のノーベル文学賞受賞者です。 そのクレジオの処女作が本作になります。 難解です。 理解できません。 でも、読み始めると嵌ってしまうような感覚に囚われます。理解しなくても構わないものだと思います。この文章は小説というより詩を読んでいるようなものです。否、もっといえば小説とか詩とかいうジャンル分けも意味を成さないです。 感覚的であることから抽象的であると一見見えますが、 実際はとても具体的であります。 アダム・ポロの一種奇妙な巡礼行はその具体的表現の中で見事にこの世界を裏切る。時間軸、空間は意味不明なものに突き詰められていく。 その世界観を感覚的に捉えることができれば、この小説の醍醐味を感じることができると思います。
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はっきり言ってかなり難解。手前の低脳では読み砕けん。いっこうにページをくくれない。 ただ、恐ろしく惹かれる。
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《1963年出版。クレジオの処女作》 繊細で鋭利なまでに描写された場面場面に卒倒しながら読み終えました。 世界に身を投じてゆくと見えてくる 自分という個の存在がある一つの世界で大量生産で作られたものだ ということ。そして個人が個人の思想や文化や世界を持っていることを知るアダム...
《1963年出版。クレジオの処女作》 繊細で鋭利なまでに描写された場面場面に卒倒しながら読み終えました。 世界に身を投じてゆくと見えてくる 自分という個の存在がある一つの世界で大量生産で作られたものだ ということ。そして個人が個人の思想や文化や世界を持っていることを知るアダム・ポロ。他人をいつも観察し、自己の巨大化と厖大化を表に露わにし、アダム・ポロならアダム・ポロ。犬なら犬。ねずみならねずみ。海岸なら海岸。彼女なら彼女。そうやって他との世界との時間の共有と拒絶を繰り返しながら調書と呼ばれる物語(時間)を送っていくアダム・ポロ。彼の名前は人類最初の男であり、生命の同類であり、兄弟であり、合理的で普通の人間として描かれている。 思考は突き詰めれば突き詰めるほど先端は細くなり、これ以上の思考の余地がなくなることを知っている。幾何学的に成立された世界で描かれる物語に凄まじいほどの戦慄を覚えました。 (2009.07.11)
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ノーベル賞をとってから読んでみたいと思っていたクレジオの処女作。 このすばらしさ、面白さは今の私にはつかみ取れなかったな。というのがもっぱらの感想。 ただ、病的なまでの描写。 とくにねずみに石を投げて殺しちゃうところのこれでもかというほどの細かな描写。 印象的だった、というよ...
ノーベル賞をとってから読んでみたいと思っていたクレジオの処女作。 このすばらしさ、面白さは今の私にはつかみ取れなかったな。というのがもっぱらの感想。 ただ、病的なまでの描写。 とくにねずみに石を投げて殺しちゃうところのこれでもかというほどの細かな描写。 印象的だった、というよりトラウマになってしまった、というほうが正しい表現なのかも。 ある現象に対して尋常じゃなく固執し、描写する、ということに関しては突出してる、というのは確か。 訳者解説のなかで、その後の作品『発熱』『大洪水』を読むべき的なことが書いてあったので、 この小説の感想を本気で書くのは、その二冊を読み終えてからにしようかと思っている。
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