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イギリスを泳ぎまくる の商品レビュー

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4件のお客様レビュー

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2021/11/30
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※このレビューにはネタバレを含みます

どんな世界にもド変態というのはいるもんだなぁ、というのが読了後の最初の感想。しかし、変態もドがつくまで極めれば清々しいというか、ある種の神聖性まで帯びてくるから面白い。 著者はイギリス在住。タイトル通り、イギリス各地の川、沼、湖、水路、プール、海、その他もろもろ、およそ「水が溜まっているところ」を泳ぎまくった、その記録が一冊の本になっている。さすがにとんでもないヘドロや汚水があるようなところでは泳いでいないが、街中の普通の川や、何が棲息しているのか分からないような山深い沼や池のようなところには躊躇なく飛び込んでいく著者の嗜好は、好意的な意味で常軌を逸している。 単なる水泳記録ではなく、その時々の自然や気候、水の中の生き物、水回りで育つ植物、そして水そのものの冷たさや心地よさが丁寧に描かれていて、読んでいて自分も水の中にイルカのような不思議な浮遊感が得られる。短い章で3ページ、長くても30ページ弱なので、最初から読まずにパラパラとめくりながら読むのもいいかも。 イギリスの地名と植生に詳しくないので、描かれている風景が脳裏に映像として浮かんでこなかったのが残念。イギリスの自然と地形が分かっていれば、もっと楽しめる本なのだろうと思う。 原著のタイトルは『Waterlog』。水の記録といったところか。原著タイトルもシンプルでいいが、作品と著者の本質を短く的確に表現した日本語のタイトルもいい。珍しくセンスがいいというか、原著のタイトルの意図を汚さずに新しい魅力を付加した、いい和文タイトルがついていると思う。

Posted byブクログ

2020/08/25

河川周りの官憲が法的根拠に乏しいのに無駄に威張っていたり許認可権を持っているのは日本と似ていて、護岸工事等も含め先進国と言えどカナダやドイツみたいな国ばかりでもないと判る一冊。季節も場所も選んだが故に過酷だったり等興味深い。今の一律の四角いプールだけがプールなだけではなく、人工的...

河川周りの官憲が法的根拠に乏しいのに無駄に威張っていたり許認可権を持っているのは日本と似ていて、護岸工事等も含め先進国と言えどカナダやドイツみたいな国ばかりでもないと判る一冊。季節も場所も選んだが故に過酷だったり等興味深い。今の一律の四角いプールだけがプールなだけではなく、人工的に加工した川泳ぎ場があった事に驚き。泳ぐ事がだんだんナウである事から外れて行く事が沁みる。

Posted byブクログ

2015/07/29

ある日、男は泳ぎはじめた。泳ぐことへの魅力にとりつかれ、海や川、湖などイギリス各地の水場という水場を雨でも冬でも泳ぎまくります。これは著者が水場を泳いで回りながら、遭遇した出来事や水辺の生物から学んだ自然保護の重要性をつづった本。著者に感化され、泳ぐことが楽しく思えます。

Posted byブクログ

2012/08/18

 人間が生きている土地には、必ず水がある。海・湖・川・池・滝……自然ばかりとも限らない。水路や堀やダムなど、人工建造物であれ、その地を流れる生命線のような流れが必ずある。  私の住んでる京都市内なら、鴨川ということになるのだろう。半ば観光地化している部分もあるけど、ジョギング、犬...

 人間が生きている土地には、必ず水がある。海・湖・川・池・滝……自然ばかりとも限らない。水路や堀やダムなど、人工建造物であれ、その地を流れる生命線のような流れが必ずある。  私の住んでる京都市内なら、鴨川ということになるのだろう。半ば観光地化している部分もあるけど、ジョギング、犬の散歩、楽器の練習などで河川敷は賑わい、今の季節なら水遊びと虫取りに一生懸命な子供の姿も見かける。  鴨川を遡った支流、高野川も趣がある。こちらはそれほど観光地化されていないので、湿地帯も多く、さらに遡れば季節によって猿・鹿・熊なども山奥から下ってくるそうな。古い家並みが川沿いにあり、時々隠れ家的なテラス付きカフェを見つけることもできて面白い。  こんな穏やかな憩いの場も、昔は氾濫することも多く被害も多かったようで、今でも集中豪雨で浸水する地区もあったりして、癒しだけではない恐ろしさも秘めた色々な表情を見せてくれる。  それに、どちらの川も河川敷でキャンプなどができないのは多少興ざめである。水質保護や美観保持の狙いはわかるのだが、余り規則で縛ってしまうのもどうかと思う。  それでも良くも悪くも、昔から続く人々の生活の営みと切り離せないのを実感することができるのが嬉しかったりする。これから先、どんな姿になるのだろう、この水の流れは。  イギリス中の様々な“水のある所”を泳ぎまくるという、何とも酔狂な試みを描いたエッセイ。コミカルでシニカル、でもイギリスという歴史のある国の自然に対する尊敬の念、そこで人間が何を営んできたかということについての称賛と批評の視点は忘れていない、痛快かつ優しいエッセイ。  プール通いをしている我が身としては、引用した冒頭の文章だけで最後まで読まされて、泳がされてしまった気分。さすがに鴨川を同じように実際に泳いだら通報されそうだけど。 “人は泳ぐとき、体の大半を構成する物質、すなわち水となじみ合い、一体になる。座礁クジラがあれほど世間の同情を引くのは、僕ら自身が、誕生以来、座礁したままでいるからだ。水泳とは、生まれる前の世界の追体験で、水に入れば、そこは子宮と同じ完全なプライベート空間だ。どちらの羊水もこの上なく安全でいて恐ろしい。(中略)陸を離れ、覗き窓をくぐって未知の世界へ。そこでは野心や欲望より、まずは生き残ることが肝心だ。”(9ページより)

Posted byブクログ