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デビッド・コッパーフィールド 1 の商品レビュー

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2018/11/18

研究社の英米文学叢書は、赤いハードカバーの堅牢で魅力的なつくりの本ですが、今は絶版となっています。 【第1巻】 本文357ページに、詳細な注釈120ページ、解説29ページ。 昔古本屋で購入した三巻本の最初の一冊。 第1章から19章まで。 英文科の学生なんかが読むための本なんで...

研究社の英米文学叢書は、赤いハードカバーの堅牢で魅力的なつくりの本ですが、今は絶版となっています。 【第1巻】 本文357ページに、詳細な注釈120ページ、解説29ページ。 昔古本屋で購入した三巻本の最初の一冊。 第1章から19章まで。 英文科の学生なんかが読むための本なんでしょうかね。 詳細な注釈はたしかにためになります。 1850年の英国の作品なんで、英語が難しい。 作者のせいというよりも、こちらの英語力の乏しさのせい。 ディケンズは当時の大人気作家として、平易な英語を書いたと思われますが、なかなか厳しい。 注釈なしでは不明なところが多々ありました。 実はこれが2回目の挑戦です。 前回は2巻目で挫折。 【第2巻】 イギリス人が大好きなミコーバー氏。 派手な身振りと流麗な手紙と借金まみれが特徴のコミカルな人物ですが、その弁舌や彼の書く手紙があまりに装飾的すぎて、辞書や注釈なしには読み進められないので、イマイチその面白さがわからない。 敵役ユーライア・ヒープの重要性がだんだん増してきますが、階級意識に基づく表現や感情があちこちに見られて、なかなか興味深い。 ディケンズは社会改良家として、こうした事柄には反対したと思われますが、ヒープの人物設定そのものが、階級意識の顕著な現れとしか思えない。 ヒープは身分が低い。だから根性も下劣だと、明らかに言ってます。 当時の読者はそれで納得したのでしょうし、作者も読者が納得することを前提に話を進めています。 英国の階級意識は根深く、パリ・ロンドンでホームレス生活を送ったあのジョージ・オーウェルでさえ、労働者階級の家の臭いは耐え難いとどこかで言っていました。 デビッド・コッパーフィールドは、英国を代表する小説ですが、面白いかとなると、正直微妙。 階級意識が鼻についてそう感じるのかというと、実はそれとは全然関係ない。 なんだか、この小説はかったるすぎ。 イギリスの19世紀小説はこんなものなのかもしれないけれども。 とにかく二巻目読了。 【第3巻】 サマセット・モームは「世界の十大小説」の中でマシュー・アーノルドの言葉を引用しながら、ディケンズの作品には第一級の詩人に要求される高度の真面目さが欠けているといっているが、私も同じように感じます。 だからダメだというのではなく、シェイクスピアの「お気に召すまま」を読むのと同じ精神をもって読むべきであって、そうすれば「お気に召すまま」とほぼ同様の心地よい楽しみを与えてくれる、そうモームは語っていました。 この小説は、たぶんそういう作品なのでしょう。 暖かい暖炉の脇で、心地よい安楽椅子に腰掛け、ゆっくり味わいながら読むといいのかもしれない。 経済的も時間的にもある程度余裕のある、落ち着いた英国人のように。 せっかちで貧乏性の読者とは相性が悪いようで、だから私などはかったるいと感じてしまうのだろう。 ディケンズはいうまでもなく英国の国民的大作家で、モームもオーウェルもディケンズが大好きである。ただし日本であまり人気がない。かれの作品には英国人の琴線に強く触れるなにかがあるのだが、その部分が日本人には伝わらないからだと思う。 ディケンズだけではなく、国民作家と呼ばれるほど自国の読者の圧倒的支持を受けている作家には同じことがいえるのかもしれない。コアのところは、他の文化に属する人間には感受不可能なのではないか。 ただし、ローカルな作家の作品といえども、その中に普遍的な真理が含まれるとき、文化や言語や民族の相違を越え、人類の共有の財産として、世界文学としての価値を持つようになる。 ディケンズのデビッド・コッパーフィールドは、英米文学史では欠くことのできない作品とされ、世界の小説ベスト100といった企画では必ず上位に入ってくるものの、英米人が選ぶからそうなるだけであって、普遍的な価値となるとどうなのだろうか。 ドストエフスキーやトルストイやトーマス・マンと肩を並べる世界的作家というのは過大評価で、あくまで英国ローカルの人気作家にとどまるのではないかと思う。 まあ、こんなへ理屈を考えなくても、日本語で長編小説を読むなら、北方健三の諸作品の方が、はるかに楽しくエキサイティングであることは間違いありません。 今から読書の楽しみを得たいと思って長編小説を読もうとする人がいたら、この小説よりも、断然そちらをオススメします。

Posted byブクログ