地に舟をこげ(Vol.3(2008)) の商品レビュー
『地に舟をこげ』は、康玲子(カン ヨンジャ)さんの『私には浅田先生がいた』が掲載された文芸誌として知った。いまVol.5まで出ていて、ときどき借りてきて、読む。 Vol.3の特集は「なぜ彼女たちは書くのか」という創作活動をする在日女性へのアンケート。康さんも含む14人の女性が...
『地に舟をこげ』は、康玲子(カン ヨンジャ)さんの『私には浅田先生がいた』が掲載された文芸誌として知った。いまVol.5まで出ていて、ときどき借りてきて、読む。 Vol.3の特集は「なぜ彼女たちは書くのか」という創作活動をする在日女性へのアンケート。康さんも含む14人の女性が答えたそのアンケートと、巻頭小説の「土」(李優蘭)、第一回「賞・地に舟をこげ」お祝い会の報告記事を読んだ。 李優蘭(イ ウラン)の「土」の主人公は、夫とともに小さな焼き肉屋を切り盛りし、子どもを育てながらひたすら働いてきた。その店に少しばかり手を掛けようと、定期預金を積んできた信用金庫に出向いた折、"規則"だから国籍が日本でない人間には貸せないと断られる。そんなあからさまな差別にあって、主人公の脳裡には、チョウセンジンカエレ、野蛮人帰れとぶつけられ、「こいつ朝鮮臭いから消毒しようぜ」と同級生からクレゾールをぶっかけられた小学校時代の記憶がよみがえる。苦労して働いてきたなかで、温かいものを感じる親切にもであってきた。それでも、あの小6のときのクレゾールの臭いの記憶は容易に消えない。 私たちは野蛮人なのか。なぜ日本にいるのか。北海道でひとり暮らしをしていた祖父に教えられた歴史と、そのときにかいだ土のにおい。強制連行で炭鉱につれてこられ、半殺しの目にあいながら働き、脱走して生きのびた祖父は、こう語ってきかせた。 「人はタレも、生まれてくる国を選ぷことはテキないけトなあ、トコテ生まれても、トコテ生きても、この土の上テハ、みんな同チ兄弟なんタよ」 康さんの本もまた読みなおしたいと思った。 もう3年ほど前になるが、康さんに本のこと、その前後のことをうかがったお話を『We』158号に掲載した。 【お話】康玲子さん 私には浅田先生がいた ―「在日」の「女性」として生きること http://femixwe.cart.fc2.com/ca11/2/p-r11-s/(在庫あり)
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