名探偵ホームズ 悪魔の足(12) の商品レビュー
ついに全集の最終巻も読み終わってしまいました。最後の短編が執筆されたのが第一次世界大戦中の1917年で、その時代の情勢をふまえた英国に紛れ込んだドイツのスパイの話になっており、ホームズもワトソンも出てこないけどいったいどうしてしまったのか、、、と思いかけたところで、長編「恐怖の谷...
ついに全集の最終巻も読み終わってしまいました。最後の短編が執筆されたのが第一次世界大戦中の1917年で、その時代の情勢をふまえた英国に紛れ込んだドイツのスパイの話になっており、ホームズもワトソンも出てこないけどいったいどうしてしまったのか、、、と思いかけたところで、長編「恐怖の谷」の探偵を思わせるような鮮やかな登場ぶりでした。詳細は書かれていないもののホームズの短い独白(目当ての人物に別人と信じさせて信頼させるように数年がかりで外国で実績を重ねてまんまと渡りをつけて疑われずに目的を遂げられるように仕向けた)があり、原作としては数行にしかならない文章から、書かれていないその間に起こったに違いないことどもを踏まえ、BBCでドラマ化する際には目まぐるしく変わってゆく欧州の政治状況でホームズが暗躍していた、というような描写もありました(『指輪物語』の映像化にあたって本編はもちろんのこと、「追補編」に入っている膨大でバラバラの内容を丁寧に拾って生かしていたのと同じ、原作への敬愛の情みたいなものを感じました)。本の感想と映像作品の感想と入り混じりましたが、少し時間をおいて、別の方が訳した現代版も読んでみたいなと思いました。ホームズの引退後の関心と楽しみがミツバチの世界だというのも、それっぽく、また物語の中での使われ方にもニヤリとするばかりでした。時代を超えて言語も文化も国境も超えて愛されて読み継がれ、シャーロッキアンという熱烈なファンを世界中に生んだ作品を読めて、時代劇でしか聞いたことのない言葉、恐悦至極とはこういう感じかな、と想像しました。大変満足しての読了です。
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