記憶の川で 塔和子詩集 の商品レビュー
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1998年刊。 塔和子さんは1929年生まれ。 13歳のときに、ハンセン病を発症され、1944年に療養所に入っていらっしゃいます。 1961年、31歳の時に第一詩集『はだかの木』を出版されて、この『記憶の川で』は15冊目の詩集で、第29回高見順賞を受賞されています。 後記で塔さんは、 「人は多くの記憶をもっていて、それは消しようのない証であり、この詩郡はそんな多くの記憶をふまえて書いたものであり、この中の作品はみな、私だけの思いであり、私だけの記憶であり誰も代わって書くことのできないものであり、書き留めておくべきことであると思う」ということに加えて謝辞を述べられていらっしゃいます。 「地球で」 この惑星の一つにすぎない地球で そのほんのひとすみのことを知っているだけでも 生きているだけならことかかないのだ 書物からの知識やテレビやラジオの伝えるものを加えても 世界中の人がかなでる出来事にくらべたら ほんのわずか 私は冬の日 カーテンをしめストーブをたき 冬眠のへびのようにじいっとうずくまって 他人の視野の外側にいる そんな自分を思うとき 人の知ることそれは 一本の樹が芽生えて古木になるまでに 知った世界にさえ くらべくもないほど小さい 他の作品もどれも素敵なのですが、「秋」「言葉の核」 「生身」「さわらないで」「見る」「記憶」が特に心に残りました。
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