陰謀・暗殺・軍刀 の商品レビュー
戦前の日本、外交官として活躍した著者が当時の日本について回想する。実際にその時代を生きた人が語っているということもあって、戦前の日本の空気感を本書から感じられる。たとえば著者が上海で仕事をしたとき、対外関係よりも体内関係の調整に、とりわけ軍部との交渉に苦労としたと振り返る。また...
戦前の日本、外交官として活躍した著者が当時の日本について回想する。実際にその時代を生きた人が語っているということもあって、戦前の日本の空気感を本書から感じられる。たとえば著者が上海で仕事をしたとき、対外関係よりも体内関係の調整に、とりわけ軍部との交渉に苦労としたと振り返る。また、幣原外交について言及しており、著者いわく幣原喜重郎(外相時代)は、陸奥宗光や小村寿太郎と異なり、内政には無関心だと批判する。
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平頂山事件(関東軍が、匪賊を匿ったと難癖を吐け現地の婦女子を連行鏖殺した事件)は本書に依り始めて世に問われ、その後の研究を経て事実と証明された。 その外当時の関東軍の横暴覇道ぶり、日本政府の無能ぶりが余す所なく書き尽くされている。 作者自身のことは作者も人間である以上ある程度は美...
平頂山事件(関東軍が、匪賊を匿ったと難癖を吐け現地の婦女子を連行鏖殺した事件)は本書に依り始めて世に問われ、その後の研究を経て事実と証明された。 その外当時の関東軍の横暴覇道ぶり、日本政府の無能ぶりが余す所なく書き尽くされている。 作者自身のことは作者も人間である以上ある程度は美化しているだろうし、全ての記載が事実とも言えない(実際、上の平頂山事件に関する記載にも一部誤解があるらしい)し、事実かどうかの見極めは読み手が行うべき読書の際の義務なので、自分もはなから全て鵜呑みにしようとは思わないが、それでも読んでいて頭が痛くなり、日本人としての誇りも矜持も消え失せた。 そして何よりそれが今の日本の政治や外交にも影を落としているということに対し暗澹たる気持ちになる。 ここ数年から十年でアイラブジャパン的な態度を見せつけるサイトや芸能人のブログが増えてき、日本軍は訓練されていて掠奪行為や従軍慰安婦というものも存在しなかったなどと言っているのは、こういう本を読むと果たしてそうだろうかと疑問を持たざるを得ない。日本人に必要なのは近現代史の授業を通して日本の立ち位置を確認することなのに、縄文から始まって江戸時代あたりで大体時間がなくなって、あとは各自読んでおくように、で終わらせられるのが残念。
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詐術と欺瞞に終始した日本軍閥の大陸進出を,当時軍に圧迫されつつ現地外交官としてつぶさに観察し得た著者がその真相を明らかにする.張作霖の暗殺,陰謀の産物である満州事変,華北工作の正体など,いわゆる「日本ファシズム」の敢行した謀略行為の非人道的悪虐ぶりが淡々とした筆致から滲み出る.日...
詐術と欺瞞に終始した日本軍閥の大陸進出を,当時軍に圧迫されつつ現地外交官としてつぶさに観察し得た著者がその真相を明らかにする.張作霖の暗殺,陰謀の産物である満州事変,華北工作の正体など,いわゆる「日本ファシズム」の敢行した謀略行為の非人道的悪虐ぶりが淡々とした筆致から滲み出る.日本の近現代史を問い直す好著.
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