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T型フォード殺人事件 の商品レビュー

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2022/12/03
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○ 総合評価  ★★★☆☆ 〇 サプライズ ★☆☆☆☆ 〇 熱中度   ★★★☆☆ 〇 インパクト ★★☆☆☆ 〇 キャラクター★★★☆☆ 〇 読後感   ★★★☆☆  まず,カバーイラストが和田誠なのが嬉しい。昔,よく読んだ星新一のカバーイラストが和田誠だった。「T型フォード殺人事件」は,このイラストに引かれて購入したようなものである。  広瀬正という作家の存在は全く知らなかった。カバー裏の著者解説を見ると,1924年生まれで1972年没。バンドをした後,主にSF作家として活躍していた様子。解説も見ると昭和47年(1972年)に,心臓発作で急死したとのこと。作品を発表するたびに直木賞候補となっていたが,SFということもあって直木賞は受賞できなかった。輸出用のクラシックカーのモデル製作も行っていたという異色の経歴。このT型フォード殺人事件は,著者唯一のミステリで遺作である。巻末で確認すると2008年11月25日に出版された改訂新版の第1刷。あまり売れていないのか。また,手に入りにくくなりそうな1冊である。標題作のほかに,2作の短編も収録されている。それぞれの感想は以下のとおり 〇 T型フォード殺人事件  泉大三が,知人・友人を招いてコレクションであるクラシックカーのT型フォードを紹介する。そのT型フォードは,殺人事件の舞台となったことがあるいわくつきの存在だった。  そのT型フォードのもともとの持ち主だった疋田善三は,T型フォードの中で発見された死体について,殺人事件の概要を話し,T型フォードのお披露目会に参加していた7人が推理合戦をする。  しかし,その真相は,無実の罪で逮捕され,無期懲役の刑を受けていた泉大三(馬杉)が,真犯人と思っていた白瀬圭一(三田村圭吉)の口から真実を聞くために,疋田善三と早乙女寛の力を借りて白瀬に罠を仕掛けていたのだった。  プロットがよくできている。46年前に起こった殺人事件の真相を真犯人の口から聞き出すために,真犯人と目される人物を読んで46年前の事件の推理合戦を始める。その最中に殺人事件が発生したと思わせるが,その殺人事件も罠。実際はただの食塩を青酸カリだと思わせていたので,殺人には至らなかった。殺人を仕掛けたことで,真犯人の三田村は自白に至る。  第6章のみ1人証の語り手が代わるという叙述トリックもあり,全体としてよくできたミステリになっている。とはいえ,泉大三=馬杉や白瀬圭一=三田村圭吉という関係性については,これといった伏線がない。密室トリックは外から蝶番が止められるように細工をしていたというもの。この密室トリックは興ざめ。もう少しブラッシュアップできていれば,古典として読み続けられる存在になっていただろう作品である。惜しい。40年以上前の作品であるということも踏まえ,★3で。 〇 殺そうとした  著者のデビュー作。自動車教習所の教官である黒木が教え子である啓子と相思相愛になり,二人で冗談のように言っていた啓子の夫である佐山殺しを実行しようとする話。佐山は自動車にも詳しく,柔道5段。自分を殺害しようとした啓子を殺害し,最後には,これも自分を殺害しようとした黒木を殺害するというオチ。  事故死に見せかけるための黒木と啓子が考えたトリックはやや陳腐。佐山が実は自動車に詳しく,柔道の達人だったという部分についても,これといった伏線はない。それなりに読ませるのは,作者の小説の上手さのゆえんだろう。★2で。 〇 立体交差  タイムトラベルモノのSF。主人公の谷千吉は,東京オリンピックを成功させるために道路工事を計画している官庁の職員。取り壊しのために中村家を訪れる。そこで,1984年にタイムトラベルし,未来の自分の姿を知る。未来の自分から,今後の行動を示唆されるが,あえて未来の自分がしていた行動と別の行動を取るというオチ。  昭和風俗モノというか,当時の人が考えていた未来の描写などを楽しむ作品か。それなりに楽しく読めるがさほどの意外性もない。★2で。  トータルとしては,ややおまけの★3で。決して楽しめない作品ではないが,古典として読み継がれていきそうなレベルでもない。そういった意味では,また,手に入りにくくなりそうな作品でもある。

Posted byブクログ