あやめ 鰈 ひかがみ の商品レビュー
「あやめ」の始まりかたが好きだと思う。事故で死んだ木原が立ちあがり死んだことを分かりながらずれた記憶の中を歩いていくところ。隣り合わせの記憶の世界では死者が生者のように動いている。「鰈」は「あやめ」にも出てきた土岐が死者の地下鉄に載って地獄の世界に足を踏み入れていくまでが書いてあ...
「あやめ」の始まりかたが好きだと思う。事故で死んだ木原が立ちあがり死んだことを分かりながらずれた記憶の中を歩いていくところ。隣り合わせの記憶の世界では死者が生者のように動いている。「鰈」は「あやめ」にも出てきた土岐が死者の地下鉄に載って地獄の世界に足を踏み入れていくまでが書いてあった。これはちょっと微妙。明らかな社会的強者と弱者の色分けが苦手なんだと思う。弱者の気持ちを上から書いてあるように読めてしまうのが苦手。性的な弱者も。今後の自分の課題でもあるかも。逃げてばかりじゃダメだ。書けないならせめて読めないとダメだと分かっているから。「ひかがみ」は良かった。真崎が死者を見送って妹を獲る。この妹タマミは蛇だ。ひかがみを触る。なめらかなひかがみをさわる。いないはずの妹。死者からの電話。生きているのはいったい誰なんだろうと思う。
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暗くて抜け出せなくてどこかへ行きたいのに堂々巡り。 でもそれが生きるってこと? 妙にリアルでした。
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現実と幻想(?)のはざまを漂う男3人のそれぞれの話が、あとがきにもあるようにまるで輪のようでした。 生きていることと死んでいることは、近いというより、少し重なっているのかなという気がしました。線を引くようにくっきり分かれるものじゃなく、生きてもいるし、死んでもいるし、そんな感じがしました。
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松浦さんの小説にはどこかうらぶれた男が出てくることが多い(気がする) 例えば堀江敏幸さんの小説なら、登場人物を堀江さん自身とすげかえて想像してもそれで違和感がなかったりするけれど、松浦さんのはそうするとだいぶ違和感が出る(学者っぽい小説家としてお二人を比べてみました) そもそも...
松浦さんの小説にはどこかうらぶれた男が出てくることが多い(気がする) 例えば堀江敏幸さんの小説なら、登場人物を堀江さん自身とすげかえて想像してもそれで違和感がなかったりするけれど、松浦さんのはそうするとだいぶ違和感が出る(学者っぽい小説家としてお二人を比べてみました) そもそもそういう読み方自体が変なのかもしれないけれど、前に読んだ松浦さんのものもそんな感じだった気がするので、なんなんだろう、と思う。 で、ちょっと思うことがある。これは「わざと」やっているんではないかと。いやいや小説家なので「わざと」やるには決まっているのだけれど。それでもあえて姿を変えて、流れる時間の中に身を置いてみる、ということをやってる感じがするのである。 ここに出てくる男は死にかかっている人ばかりである。冥界に足片方(あくまで片方)を突っ込んでみせることで日常に見えてくるものを探る、という所作のように思われるのだが、どうだろうか。 最近、文学を読んでいて「幽霊」というワードが気になっている。これもある意味「幽霊」を扱っているような気がするけれど。 それにしても『あやめ 鰈 ひかがみ』というタイトルの妖しさといったらない。三篇の絡み合いも後で振り返ると面白い。
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社会の底辺で幽明の境を彷徨う男達が落ちてゆく失墜の中に呑み込まれながらも、幸福を見出してゆく過程を描いている。虚実が定かでない幻想世界に今回もどっぷりと浸らせてもらった。花腐しや幽に比べると幾分弱いか。
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三本の短編からなる連作小説。 主人公は多少の違いはあれ生と死の狭間の世界にいる。 「あやめ」は生と死の間に生えているとされる花で、主人公の旧友がママをするスナックの名前でもある。主人公は交通事故にあって死んだはずの男だ。 「鰈」は泥酔して記憶があいまいになりいつ買ったかわからない...
三本の短編からなる連作小説。 主人公は多少の違いはあれ生と死の狭間の世界にいる。 「あやめ」は生と死の間に生えているとされる花で、主人公の旧友がママをするスナックの名前でもある。主人公は交通事故にあって死んだはずの男だ。 「鰈」は泥酔して記憶があいまいになりいつ買ったかわからない魚がクーラーボックスに入っているという、これも生と死のモチーフとして描かれている。 「ひかがみ」は膝の裏側のくぼみのことだ。いつ死んだのか、いや元々いたのかもわからない妹の布団からのぞくひかがみは、生(性でもある)のモチーフである。 全編通して時間の知覚をあいまいにすることで、都会の隅で時間が濁っていく描写のその手管が最高でとても気持ちよく陶酔の世界に入り込むことができる。
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推敲してるんだろうけど、「うまいこと言ってやろう」みたいな変な気負いが感じられず、非常に自然で綺麗な文章。尊敬する。
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