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アートと美学 の商品レビュー

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2018/08/06

「まえがき」によると、本書は著者が某芸術大学で、美学専攻ではなく実制作畑の大学院生たちに向けておこなった講義にもとづいていると書かれています。そのため、読みはじめる前は美学の基本的な概念を解説しながら現代アートの見方についてやさしく語った本だと思ったのですが、語り口に多少くだけた...

「まえがき」によると、本書は著者が某芸術大学で、美学専攻ではなく実制作畑の大学院生たちに向けておこなった講義にもとづいていると書かれています。そのため、読みはじめる前は美学の基本的な概念を解説しながら現代アートの見方についてやさしく語った本だと思ったのですが、語り口に多少くだけたところはあるものの、予想以上に重厚な内容の本でした。 本書の全体を導いているのは、こんにち「アート」と呼ばれているものは、従来の「芸術」とはどのようにちがうのか、ということです。ハイデガーを中心に哲学的美学を学んできたという著者は、この問題を掘り下げるために西洋形而上学における美学の歴史を踏まえて、バウムガルテンやフィードラー、あるいは古代ギリシアの哲学者たちによる美学思想を参照し、美学の観念史的な議論をくり広げていきます。 本書は論文ではないので少しとりとめのない印象もありますが、哲学的美学の歴史のなかからいくつかの観念をピックアップして、その来歴が解説されていて、非常に興味深い内容でした。著者のもう少し本格的な論考も読んでみたいと思わされました。

Posted byブクログ