モレルの発明 の商品レビュー
あっという間に読めてしまう作品。つまり初めから終わりまで興味をそそられる作品。どういうことなんだろう?と先へ先へ進んでいく作品。SF的推理小説。 だから本当にとてもおもしろい作品である。 でも私は何か少し物足りなく感じた。あまりにも簡単に進み過ぎてしまう気がした。もっと引っ張っ...
あっという間に読めてしまう作品。つまり初めから終わりまで興味をそそられる作品。どういうことなんだろう?と先へ先へ進んでいく作品。SF的推理小説。 だから本当にとてもおもしろい作品である。 でも私は何か少し物足りなく感じた。あまりにも簡単に進み過ぎてしまう気がした。もっと引っ張ってもっと長くしてもいいように思った。 だって本当に構成も題材(内容)もスゴいのだ。 イマージュ、死(不死)、分身、愛情という感情。 提議している内容を普通に語ったらたぶん難しい学術論文になってしまう。それを小説として形にしているのだからスゴくて当然である。 私はこれを読んでこれまでも考えて続けていることをまたぶり返して考えてしまった。 それは『意識と肉体』について。延いては『死』について。 鏡や写真や映像といった本人を映しているにも関わらずそれは決して本人そのものではないという事実。 写真に映ったその人は写真として存在しているけれどその人そのものは存在していない。 写真の中のその人はその人であるがその人という実物ではない。 それは現実に存在するもの(=生きているもの)と過去に存在したが現在は存在しないもの(=死んでしまったもの)の対比に似ているように思う。 映ったそれは映されたものの過去の残像であり、過去の記憶の断片でしかない。 どんなに鮮やかに生々しく映っていてもそれは現実に生きているものにはならない。 平野啓一郎の『葬送』にもこれに通ずる似たような描写があった。 ショパンの姉が死んでいこうとしている弟を見て<生きている人間と死んだ人間>について考える場面がある。 現にいるというだけで曖昧さはない。証明も必要ない。 生きている人間の記憶は断片にはならない。 それは生きている人間は未来がありその未来にどんな人間にでもなり得る自由があるからである。 要約するとそういうようなことが書かれている。 どんなに生きているような映像であっても未来がなければ生きていることにはならない。 『モレルの発明』という本について感想はあるのだけれど、内容をばらさないように書こうとするとあまりにも複雑すぎてうまく文章にできない。 とにかく面白いからおススメとだけしか言えない。あとは読んでからのお楽しみ。 どんな人も楽しめる小説だと思う。
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一人称の語りで、矛盾を含みながら日記形式で語られていく島での不思議な出来事。 何が事実で何が虚構なのか。 ラストに「私」がとる行動で物語の枠組みは崩壊し、我々読者の視線は奇妙に虚空を漂うことになる。 私が私として存在するとはどういうことなのか。 重いテーマと最後の「私」の選...
一人称の語りで、矛盾を含みながら日記形式で語られていく島での不思議な出来事。 何が事実で何が虚構なのか。 ラストに「私」がとる行動で物語の枠組みは崩壊し、我々読者の視線は奇妙に虚空を漂うことになる。 私が私として存在するとはどういうことなのか。 重いテーマと最後の「私」の選択の悲壮さとは裏腹に読みやすいのも良かった。 この雰囲気を映像でも味わいたいならブラザーズ・クエイの「ピアノチューナー・オブ・アースクェイク」を是非。 ストーリーを追うのではなく、映像の美しさを楽しめる方向け。
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[ 内容 ] 二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆...
[ 内容 ] 二つの太陽、二つの月が輝く絶海の孤島での「機械」、「他者性」、「愛」を巡る謎と冒険。 [ 目次 ] [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
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[関連リンク] 『モレルの発明』 アドルフォ・ビオイ=カサーレス epi の十年千冊。/ウェブリブログ: http://epi-w.at.webry.info/201005/article_3.html 完璧な小説「モレルの発明」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んで...
[関連リンク] 『モレルの発明』 アドルフォ・ビオイ=カサーレス epi の十年千冊。/ウェブリブログ: http://epi-w.at.webry.info/201005/article_3.html 完璧な小説「モレルの発明」: わたしが知らないスゴ本は、きっとあなたが読んでいる: http://dain.cocolog-nifty.com/myblog/2011/11/post-a2f8.html
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読んだ中では一番好きな南米小説。 私ってSF要素好きだったんだなぁ。 ボルヘスの大親友で共著も多いビオイ・カサーレス。そのボルヘスが序文を書き、「完璧な小説」と評したのがこの「モレルの発明」。'LA INVENCION DE MOREL' 故国ベネズエラから...
読んだ中では一番好きな南米小説。 私ってSF要素好きだったんだなぁ。 ボルヘスの大親友で共著も多いビオイ・カサーレス。そのボルヘスが序文を書き、「完璧な小説」と評したのがこの「モレルの発明」。'LA INVENCION DE MOREL' 故国ベネズエラから政治的迫害のために逃亡した男がたどり着いたのは孤島。無人島であるはずの島で男は奇妙な男女を目撃する。その島で行われていることとは・・・。 なんだか謎が多い小説。島の男女が徹底的に男を無視することから自己や、自己のなかの他者性など深読みしようと思えばどこまででも深読みできそうな要素が散らばっている。 単に奇怪なSF小説として読んでも十分面白い。 わたしはモレルの意味不明な発明品についてもうちょっと考えたいのでこの小説について書かれた論文を読んでからまた読みたい。あと、あとがき解説を読んで、モレルと男の「鏡像関係」もとても面白いと思った。 島に漂う暗い雰囲気が好き。 あと画家のレオナール・フジタの名前が出てきたのも、なんか嬉しかった。 映画「去年マリエンバートで」の元ネタにもなっているそう。
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死からの逃避、あるいは恐怖の封じ込め。それはどこからしら理性の放棄という臭いがする。自らを騙すというニュアンスがあるのである。逆にどこまでも理性的に、恐怖に対する感情を突き詰めていったとしたらどうなるのか。本書ではまさにそういう物語が展開する、と言えるかも知れない。 それは読み...
死からの逃避、あるいは恐怖の封じ込め。それはどこからしら理性の放棄という臭いがする。自らを騙すというニュアンスがあるのである。逆にどこまでも理性的に、恐怖に対する感情を突き詰めていったとしたらどうなるのか。本書ではまさにそういう物語が展開する、と言えるかも知れない。 それは読み始めた途端に満ちている。死が、である。しかしそこに満ちている死は、ただそこにじっと存在しているだけではない。動き回るのである。永遠の生として死が存在する。そこが不気味であり、恐怖の源でもある。 本書からは多分にボルヘスの怪奇譚に似た香りがする。それは個人的には、表と裏が入れ替わるような物語であることを意味するのだが、この物語の中では、その入れ替わりは鏡の中にするりと入っていってしまうような感覚で起こる。その予感は序盤から徐々に膨らんでいくのである。そして、その入れ替わりが何度起こったことなのか、そういう疑問がわいてしまうと、不気味さはより一層増すのである。 話は違うけれど、「去年マリエンバードで」という映画のことをずっと気にかけていたのだが、本書の始まりのほうでその避暑地の名前が出て来た時にピンときた。なる程、そういう繋がりだったのか、と池内紀の解説を読んで納得した。
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SF。 短い作品だが、なかなか面白い着想からスッキリとオチをつける展開といい、作品に込められたテーマ性の表現といい、まさに良作の名にふさわしい。 1940年の時点で、ここまでのSF作品が発表されていたとなると、20世紀のSF作家はさぞ苦労したろうなあ。 文章としては一人称小説で...
SF。 短い作品だが、なかなか面白い着想からスッキリとオチをつける展開といい、作品に込められたテーマ性の表現といい、まさに良作の名にふさわしい。 1940年の時点で、ここまでのSF作品が発表されていたとなると、20世紀のSF作家はさぞ苦労したろうなあ。 文章としては一人称小説で、主人公自身が状況を正確に判断していないところから、いわゆる「信頼できない語り手」であり、読み手はそこに書かれていることの何が本当で何が主人公の勘違いなのか、常に考えながら読めるのが楽しい。反面、主人公はちょっと頭が鈍い印象があり、短い作品なのに読んでいてじれったく感じる部分もあって、そこは残念だった。
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