昭和思想史とシェリング-哲学と文学の間- の商品レビュー
近代に明確なアンチテーゼをぶつけた1930年代を昭和思想史の時代とし、そこに通常ドイツ観念論の系譜で読まれるシェリングがどのような影響を与えたのかを論じる。 …といっても直接的影響を認めるのは難しいのか、西谷啓治や三木清らのニーチェ受容についてのリトマス試験紙的にシェリングが持...
近代に明確なアンチテーゼをぶつけた1930年代を昭和思想史の時代とし、そこに通常ドイツ観念論の系譜で読まれるシェリングがどのような影響を与えたのかを論じる。 …といっても直接的影響を認めるのは難しいのか、西谷啓治や三木清らのニーチェ受容についてのリトマス試験紙的にシェリングが持ち出される。直接的影響を認めることが難しいという点では保田與重郎が象徴的。保田はコギトでひたすらにヘルダーリンなどのドイツロマン派の受容に努めている。しかし、若くして亡くなりつつも保田に強い影響を及ぼした、中島栄次郎と松下武雄のふたりを迂回させることで本書の主題に到達する。そして、シェリング→中島・松下→保田の流れを述べている。 30年代にあった思想にニーチェはニヒリズムという影響力でもってフィクサーとして君臨している。ドイツロマン派はその浮遊感によって賛否こもごもの存在感を見せている。一方、ひかえめに言ってシェリング思想はその断片が散りばめられいるのかな、といった印象を受けた。
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