柳田国男 の商品レビュー
日本の民俗学を拓いた柳田国男は、もともと農商務省で協同組合の普及に取り組む農林官僚であった。では、柳田の民俗学と農業政策構想との間には、関係があるのか無いのか。この点を、『遠野物語』(1909年)と同時期における柳田の農政論集とを読み比べることによって検討した一冊。 著者は本書...
日本の民俗学を拓いた柳田国男は、もともと農商務省で協同組合の普及に取り組む農林官僚であった。では、柳田の民俗学と農業政策構想との間には、関係があるのか無いのか。この点を、『遠野物語』(1909年)と同時期における柳田の農政論集とを読み比べることによって検討した一冊。 著者は本書冒頭で、「柳田国男の学問の「動機」は協同組合を日本に定着される点にあり、その「目的」は日本人における自助と協同の精神(協同組合の倫理)を日本人に自己認識させる」ことだと明示していて、本論ではこれが具体的に論じられていく。著者によると『遠野物語』の目的は怪異談の収集それ自体ではなく、人間観察である。 柳田と交流があった島崎藤村や田山花袋も、柳田同様観察を掲げていたが、その見ているものは柳田とは大きく異なると、著者は指摘する。たしかに、藤村の『千曲川のスケッチ』は『遠野物語』とほぼ同時期の1912年。だが、両者が描く世界は好対照である。
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