湿った空乾いた空 の商品レビュー
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
吉行淳之介にしては家庭小説っぽくて新鮮な味わいがある。だからか、読みながら島尾の『死の棘』を比較する意味で当てはめていた。今までは吉行の結婚相手以外の女性とのやり取りを見ても、生物学的な体の分析というところにスポットを当てていたが、今回は行為もなく、不倫相手との関係も作中では落ち着いている。だからその落ち着き加減が妙に面白い。妻は発狂もしないし、主人公に直接害を与えてはこない。平静のなかに主人公の小さな不安がぽっと浮き出る。読んでいて不安を感じさせないのがこの作者のらしさのようで、一冊としてのインパクトは欠けるのかもしれないが、吉行作品をまた一冊読み終えたという満足感は残った。 僕が初めて昔の純文学を読もうと決意して買った作品を一つこれだと挙げるのは難しいが、神保町で買った200円の『夕暮まで』はかなり印象深く覚えている。あのあたりからなのだ。
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旅行記だけど、殆どが主人公の心境や妻との喧嘩、出来事で成り立つ。 確か深夜特急の最後の対談のところで誰かがこの本を紹介していて、"感情旅行"と表現しているところに惹かれた。 途中までは想像していたよりも面白くはないかも、と思ったけど、何故か途中からクセになる...
旅行記だけど、殆どが主人公の心境や妻との喧嘩、出来事で成り立つ。 確か深夜特急の最後の対談のところで誰かがこの本を紹介していて、"感情旅行"と表現しているところに惹かれた。 途中までは想像していたよりも面白くはないかも、と思ったけど、何故か途中からクセになる。 ちょっと病んでる時に読んだら余計に読み進む。 主人公の包み隠さない正直な言葉がよかった。
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