1,800円以上の注文で送料無料

世界見世物づくし の商品レビュー

5

1件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    0

  3. 3つ

    0

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2009/10/07

この人の腹が据わっている文章と生き方がとても好きだし、本書も実際とても面白く「支那」関係の洞察は今でもよく通用すると思う。 貧乏についての文章にはとくに笑った。曰く「貧乏も、ひとり身でやっているのだったら、からだがひきしまって、そんなにわるいものでもない」。「貧乏に平気な女がいた...

この人の腹が据わっている文章と生き方がとても好きだし、本書も実際とても面白く「支那」関係の洞察は今でもよく通用すると思う。 貧乏についての文章にはとくに笑った。曰く「貧乏も、ひとり身でやっているのだったら、からだがひきしまって、そんなにわるいものでもない」。「貧乏に平気な女がいたら、と僕はあくがれたほどだ。それほど例外なしに、女は、貧乏ぐらしの苦しさが辛抱できない」。「中西悟堂君は、米や、パンを排して、しばらく松葉を摘んで常食にしていた。蛙をつかまえて、あたまから呑んでしまうのをみていて三歳位だった僕の息子が、わっと泣き出したことがあった」。「真の貧乏人とは、もっと筋骨の通った堂々としたもので、福士幸次郎、吉田一穂、山之口獏などのような、不退転な貧乏のことをいうのだ」。「『お前、一人殺したら、日本金千円やるといったらやる気あるか?』と、Dという友人が言ってきたとき、僕は、それもいいな、とおもったくらいだ。ともかく、巴里の貧乏から脱出できるのなら、たいがいなことはやってもいいとおもったものだった。恐らく、戦後の青年の気持ちもそれに似たようなものではなかったろうか」。「西洋の貧乏は、決してたのしいものではない。竹の家、紙の家の余情はなくて、鉄鎖と石室の非情に終始している」。「ところが戦争を越えてからの現在の日本は、あの頃の西洋とよく似てきて、先にも言った通り、金がなければ一日もすごせない。貧乏はできなくなったのだ」。

Posted byブクログ