百合作品ファイル の商品レビュー

文学・エッセイ・詩集

2012/06/18

回送先：八王子市立中央図書館

雑誌『百合姫』が選定したと喧伝する百合作品をまとめたムック本。
ただそれだけ。特段何かコメントせよ、といわれても思いつかない。

というのも本書の場合、（編集サイドが想定する）「女性」と「男性」そのどちらかに受け入れられることの可能な作品を併記することで八方美人風情を醸し出そうとして見事にしくじっているからなのである。あけすけに言ってしまおう、本書を編集したのは『百合姫』の編集サイドではない。男性相手に特化しがちな『百合姫S』の編集サイドが主導権を握って記した印象が露骨に見え透いているのである。つまり、たとえ女性が共感を覚えそうな作品であったとしても、行間の端から異性愛男性の想像する「（性自認などを端折った）女性同士」の友情と性愛の狭間に横たわる葛藤を性的欲望として横すべることを是認するまなざしが見えてしまうのである。

この性的欲望のまなざしが、実のところ「百合」あるいは「Girls Love」という表象のスタイルや文法に、微妙な不協和音を奏でる原因となっているのだが、それは本書の行間だけでなく、紹介されている作品のイラスト一枚とっても明確なのは言うまでもない。事実、イラストの絵柄を直視することは評者にはできない相談だったのだから。