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グローバルガバナンスと国連の将来 の商品レビュー

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2009/10/07

そもそもグローバルガバナンスという概念自体がグローバリゼーションの影響の拡大や、人権・人道などをはじめとした国家、民族、宗教、文化などを超えて共有される普遍的概念により世界で発生する問題に国々が干渉していくようになった21世紀特有の視座と言えると思います。特に最近ではテロ、感染症...

そもそもグローバルガバナンスという概念自体がグローバリゼーションの影響の拡大や、人権・人道などをはじめとした国家、民族、宗教、文化などを超えて共有される普遍的概念により世界で発生する問題に国々が干渉していくようになった21世紀特有の視座と言えると思います。特に最近ではテロ、感染症、環境問題などが「Problem without Passport」とアナン前国連事務総長によって呼称されるよう、そういった問題に世界的に一致した認識と解釈をもとに一致した行動をとっていかないことには状況改善や問題解決に向けて動き出せないという問題も存在します。 タイトルの「グローバルガバナンス」が包含する問題群はあまりに広いのですが、この本では特に紛争予防と平和に関する国連の関わり方と行動方式に付いて焦点をあてた論文が多いのが特徴です。個人的に関心がある論文が多く収録されているのは良いことなのですが、少し論文執筆時と発刊時との間にタイムラグがありすぎるかな?という論文もありました。平和構築の分野ではかなり著名で多忙な方でもありますので、一般的な学術論文の形に添ったものを求めるのは筋違いなのかもしれませんが、どうしてもそんな欲ばかりが目についてしまいますね。 そんな論文集の中でも参考になる情報が多かったのは、国立グジャラート法科大学学長のV・S・マニ氏が書いた第7章「アフガニスタンにおけるISAFー「人道的」な外科手術後の「看護」に関する研究」、中央大学法科大学院の北村奉三氏の著した第11章「平和構築における混合刑事裁判所の役割ー法の支配の実現に向けて」、そして恩師である中大教授・内田孟男先生が書いた第14章「国連と事務総長ー事務総長の役割を中心に」ですね。特に、11章の北村先生が書かれたも混合刑事裁判所については初めてしることでしたし、武力対立の後に信頼関係とを一から積み上げ直していくために、罪を犯したものを裁く場として考えられる新鮮な視点でした。 現在では、テロリズム、地球温暖化、都市化、貧困、感染症など戦争・紛争意外にもグローバルガバナンスの領域に含まれる問題が政治・経済・文化を横断して幅広く存在しています。それも過去にさかのぼってみて見れば問題の所在は古くから叫ばれていたものの、効果を生みだせる行動がなかったがためにそのインパクトがすでに人類的課題になったがために求められている概念だと思うのです。その広い問題群にあって紛争や平和に関心を寄せる方にはおすすめできる書籍です。

Posted byブクログ