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東大入試 至高の国語「第二問」 の商品レビュー

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8件のお客様レビュー

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2024/08/07

 おすすめ!目から鱗の本。東大入試問題に興味がない人でも、金子みすずや宮澤賢治を、深く読み直すことができる。  分析の仕方はテクスト論に近い感じがするが、語り手と作家を引き離しすぎずに、すごくいい塩梅で、読み進める程に、テクストの理解が深まっていく。他の読み方ができなくなるくらい...

 おすすめ!目から鱗の本。東大入試問題に興味がない人でも、金子みすずや宮澤賢治を、深く読み直すことができる。  分析の仕方はテクスト論に近い感じがするが、語り手と作家を引き離しすぎずに、すごくいい塩梅で、読み進める程に、テクストの理解が深まっていく。他の読み方ができなくなるくらい、そのロジックは圧巻。

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2019/10/20

東大の国語が一貫して問うてきた「死」。その軸に沿って、東大の過去問を紐解いていく。筆者によれば、受験生の解答はおろか出版社の「模範解答」すら表層的な理解にとどまっており、東大の意図を捉え切れていないという。 比較的難解なテーマである一方、決して難しすぎないと思うので、東大に関わり...

東大の国語が一貫して問うてきた「死」。その軸に沿って、東大の過去問を紐解いていく。筆者によれば、受験生の解答はおろか出版社の「模範解答」すら表層的な理解にとどまっており、東大の意図を捉え切れていないという。 比較的難解なテーマである一方、決して難しすぎないと思うので、東大に関わりのない人も含めて一度は読んでみることをお勧めしたい。

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2012/12/07

東大の入試問題にここまでストーリーを見出すか! あまりにも鮮やかに描き出しているので、懐疑的になってしまうけれど、通読してみると、やはり納得させられてしまう。 それが深読みなのかどうかは分からないが、ひとつの分析のかたちであると思う。

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2012/07/10

俺は頭が良くないから難しいことはよくわからないけど、この本は「東大入試の国語」の問題にはに死と誕生、彼岸や食物連鎖のような対照的、対極的のようで連鎖している深いテーマを見つけようとしている。 関係ないけど、万物が「死」をむかえるのは、あとから生まれる「生」が進化を促すから感じた。

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2010/09/03

過去30年の東大現国入試。その至高の第二問。 99年まで東大入試現代文には、「二百字作文」と呼ばれる問題形式が存在していた。それはある文章を読んで、それについて感じた事、考えた事を二百字で述べよ、というものだった。 後年になるほど「単に要約、説明、体験談を求めているのではない」...

過去30年の東大現国入試。その至高の第二問。 99年まで東大入試現代文には、「二百字作文」と呼ばれる問題形式が存在していた。それはある文章を読んで、それについて感じた事、考えた事を二百字で述べよ、というものだった。 後年になるほど「単に要約、説明、体験談を求めているのではない」という注釈がつくほどこの問題にたいして率直に意見を述べる学生の割合が少なかったのだろう。作文なんて何年ぶり、という学生も多かったのかもしれない。 それはさておき、そこで取り上げられる文章がどれもこれも「死」を意識せざるを得ないものばかりで、まるで東大現代文は死に取り付かれているようだ。 一見、死の香りもしない文章の引っ掛かりを探ってみると、その根底には死が潜んでいる。 伝説の良問と名高い1985年の金子みすずの詩は、そのまま読めば弱者への配慮を忘れないように、ともとれる。 だが、これは誰もが誰かの犠牲に成り立っているという「みんなクロ」という構造を示している。 他人事ではなく、私たち自身が被害者でありながら加害者であるという意識を突きつけている。 一般的な受験勉強ではこのような考え方については教えられない。けれど、死や罪といった答えの出ない矛盾や苦しみを持つ「デクノボー」たちに東大は優しい。そういう人を求めているのだろう。 その「死」であるが、死とはまた生の対極にあるものではない。 時間軸が生から始まって真っ直ぐに伸び、最後に死で終わる。このような時間軸なら生まれたものには死に向かって生きている。 けれど、それとは別の時間軸、季節で円環する時間軸もある。そこには死(冬)の後に生(春)が来る。そして、また死に向かっていく。 誕生=死の方程式が成り立ち、生まれるためには死をくぐらなければいけない、という世界観がある。 すると、死は回る時間の中の一つの過渡期にすぎない事が分かってくる。 排除しがちな死は以外にも日常の中に潜んでいる。それは夢の中の空き地の光景の泣きないほどの懐かしさだったり、線香花火の落ちる灯の切なさだったり、散っていく桜の花びらの儚さだったりする。 その小さな死に目を向けると、私達の日常は容易にひっくり返ったりするのだ。 死とは生の始まり、とは何も季節の例えにすぎるわけではない。 生き物は皆死ぬが、誰だって死には恐怖を感じる。だが、死をだんだんと受け入れられる心境に変わっていくらしい。それは積極的な死への希求ではなく、次世代が自分達の役割を担っていく事を認め、生を諦める事、と記述されている。 その意味でこの社会は祖先の遺産/犠牲の上に成り立ち、私達は彼らからプレゼント/負い目を受けている。 私達の役割とはその債務手形を次世代に引継ぎ、どんどんドミノ倒しのように次へ次へ渡していく事だ。 死の上に生が成り立ち、誰もがそのドミノの上にある。 その事が「第二問」の根底を流れるテーマだった。 ・蛇足になりますが、備忘録として引用します。 「言葉」の語源(「言」はコトの全てではなく、ほんの端にすぎないもの) 「子供の頃、おそらく私達の多くは似たような経験をしているはずだ。 遠足の興奮をあとで作文に書こうとして、できあがった文章がどうもしっくりこなかった経験として。 遠足という事態を振り返って捉えようとした瞬間、その時の興奮は手からすり抜けていってしまい、何度「楽しかった」と繰り返しても、陳腐な「抜け殻」の負ような表現になってしまう。 (中略) まして言葉によって乱舞する雪という「こと」を表現しようにも、ほんの「端」にしか言葉(ことのは)にならない。」

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2010/08/20

P7 たとえば、ある青年医師の経験は象徴的だ。一九七七年、三〇歳の医師が 線維肉腫で片足を切断する。しかし、その九ヵ月後、胸に痛みを感じる。 ガンの転移である。その日のことを彼はこう記している。  (転移を知った)その夕刻。自分のアパートの駐車場に車をとめながら、  私は不思議...

P7 たとえば、ある青年医師の経験は象徴的だ。一九七七年、三〇歳の医師が 線維肉腫で片足を切断する。しかし、その九ヵ月後、胸に痛みを感じる。 ガンの転移である。その日のことを彼はこう記している。  (転移を知った)その夕刻。自分のアパートの駐車場に車をとめながら、  私は不思議な光景を見ていました。世の中が輝いてみえるのです。  スーパーに来る買い物客が輝いている。走りまわる子供たちが輝いている。  犬が、垂れはじめた稲穂が雑草が、電柱が、小石までが美しく輝いてみえるのです。 死に直面すると、これまで何気なく見ていた、いわば白黒の世界が、 突然このように総天然色の輝く世界へと姿を変える。世界がまったく違って見える。 ・・・ 桜は同じなのだが、自分が劇的に変化した、ということである。養老は言う。 「知るということは、自分がガラッと変わることです。したがって、世界が まったく変わってしまう。見え方が変わってしまう。」 ●これは欺瞞じゃないかな。下記のように人間の感覚の不確かさを  象徴しているだけだと思う。   ・一緒に食事をしていた友人がタバコ嫌いだと知ったから吸わない。  ・あいつのことは嫌いだけど、具合が悪いと知ったからやさしくする。  ・ただの茶碗だと思ったけど、100万円もすると知ったら良い物に思える。  こういった感覚で死を美しく捉えようとしてはならない。死の感覚を  歪めてはならない。 ●普遍的な『ほんとうの幸せ』なんて存在しないんじゃないかな。 ●人間が生き物の犠牲のうえに生きなければならないことは、ほんとうに  不幸なことだろうか。仮にテクノロジーが発展して、人間が空気から  エネルギーを得ることができるようになり、一人で誰にも迷惑をかけず  生きることで幸福になれるのだろうか。世界では微生物を魚が食べ、  魚の屍骸を微生物が食べているのに。生き物が他の生き物を殺さず  生きていくことで、幸福になれるとは思えない。 ●生き物を殺して食べて自分が生きることが偽りの幸せだとする。仮に空気をエネルギーに変える機械が発明されて、人間がいかなる殺生もおかさず一人で生活できたとして、外の世界は変わらず草は牛に食べられ、牛は虎に食べられている。さらなる革命が訪れてすべての生き物が空気で生きて、何者にも害を与えない世界になったとき、『ほんとうの幸せ』が訪れるのだろうか。 ●春 暖かい陽射しを好きになる。太陽は喜んで近付く   夏 熱い陽射しを憎む。太陽は慌てて離れる。  秋 日に日に涼しくなる陽射しに安堵する。太陽はますます傷付き離れる。  冬 寒さを嫌悪し家にこもる。太陽は傷心のなかで近づいて行く。 ☆きっかけは日経トレンディの読書術に関する書評をみて 読了日:2010/08/

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2009/10/04

お世話になった先生の著書。 ひとつのテーマをもとに、色んな例をあげて説明してくれている。 私も「解決不能の問題」に取り組んでみたい。 常に現状を否定し、進み続けること。

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2020/07/15

あらゆる入試の中でも、東大の現代文の試験というのは、独特な問題が多いのだという。特に「第二問」は、文章を読んだ上で感想や考えを200字以内でまとめるという簡潔な形式ながら、良問ぞろいと言われている。 この本では、過去の様々な「第二問」が取り上げられていて、それを見ると確かに、短い...

あらゆる入試の中でも、東大の現代文の試験というのは、独特な問題が多いのだという。特に「第二問」は、文章を読んだ上で感想や考えを200字以内でまとめるという簡潔な形式ながら、良問ぞろいと言われている。 この本では、過去の様々な「第二問」が取り上げられていて、それを見ると確かに、短いながらも本質的な問いかけをもっている文章ばかりが、見事に揃っていると思う。 この、名作というべき数々の過去問題をまとめて見れるという点で、この本はとても素晴らしいのだけれど、それぞれの問題についての著者の解説は、あまりしっくりこなかった。 ただ、この「第二問」は実に幅広い解釈が可能な問題ばかりで、数学や世界史のように答えが決まっている科目と比べれば、人によってその見方はかなり違うので、解説をしようとすること自体がそもそも難しいのだろう。 特に面白いと思った問題は、 「寅さん」の映画中のセリフ3つから一つを選んで感想を書かせる1992年と、 死を覚悟した国木田独歩が友人に宛てた手紙に対して返信をさせる1982年の問題だった。 次のア・イ・ウは、同じ主人公が登場するシリーズものの映画のセリフである。ア・イ・ウのいずれかを選び、それを手掛かりとして、感じたこと、考えたことを、160字以上200字以内で記せ。 ア「インテリというのは自分で考えすぎますからね、そのうち俺は何を考えていただろうって、分かんなくなってくるんです。つまり、このテレビの裏っ方でいいますと、配線がガチャガチャにこみ入っているわけなんですよね、ええ、その点私なんか線が一本だけですから、まァ、いってみりゃ空っポといいましょうか、叩けばコーンと澄んだ音がしますよ、なぐってみましょうか」 イ「寅さん、人はなぜ死ぬのでしょうねえ」 「人間?そうねえ、まァ、なんて言うかな、結局あれじゃないですかね、人間が、いつまでも生きていると、陸の上がね、人間ばかりになっちゃう−−うじゃうじゃ、うじゃうじゃメンセキが決まっているから、みんなでもって、こうやって満員になって押しくらマンジュウしているうちに、足の置く場がなくなっちゃって、隅っこに居るやつが、アアなんて海の中へ、パチャンと落っこって、アップ、アップして『助けてくれ!助けてくれ!』なんてね、死んじゃう。そういうことになってるんじゃないですか、昔から。そういうことは深く考えないほうがいいですよ」 ウ「梅の花が咲いております。どこからともなく聞こえてくる谷川のせせらぎの音も、何か春近きを思わせる今日この頃でございます。旅から旅へのしがない渡世の私共が、粋がってオーバーも着ずに歩いておりますが、本当のところ、あの春を待ちわびて鳴く小鳥のように、暖かい陽ざしのさす季節に、恋い焦がれているのでございます」(p.31)

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