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「アボジ」を踏む の商品レビュー

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2020/09/08

著者の短編小説七編を収録しています。 本書の巻末に置かれている「単行本あとがき」には、「私は長篇小説ばかり書いている、それも途方もなく長い作品ばかり書いている作家だとふつう思われている」と書かれていますが、本書を読み通した感想も、やはり著者は本質的には長編作家に向いているのでは...

著者の短編小説七編を収録しています。 本書の巻末に置かれている「単行本あとがき」には、「私は長篇小説ばかり書いている、それも途方もなく長い作品ばかり書いている作家だとふつう思われている」と書かれていますが、本書を読み通した感想も、やはり著者は本質的には長編作家に向いているのではないかということでした。 本書に収められている作品の多くは、在日コリアンや戦争責任など、たいへん大きな問題に踏み込んでいます。著者は、現実の問題に実地に飛び込んでいく行動派の思想家ですが、それでも小説家である以上にやはり思想家であるように思います。そのせいか、日常の細部に視線を行き届かせるようなことばをつづることよりも、著者自身の思想的な立場からテーマの本質をつかみとることに努めているように思えます。そのため、短編ではそうした著者自身の理解を十分に展開することができず、どこか中途半端な印象があります。 そんななかで、比較的長い「折れた剣」という作品は、中国の現実と戦争責任の問題を、ひとつの角度から切り取ってその様相の複雑さを提示したもので、興味深く読みました。

Posted byブクログ