赤毛の男の妻 の商品レビュー

ビル・サンボーン・バリンジャー(著者),大久保康雄(著者)

バリンジャーらしい凝…

[文庫ＯＦＦ]

バリンジャーらしい凝った構成の作品。追跡劇としても秀逸の出来。

2022/04/05

医者を志しながらも環境に恵まれず、貧しい人生を歩んできた男。彼にとっては、学生時代に出会い、激しい恋に落ちた美しい女だけが心の拠り所だった。だが、格差故に引き離され、放浪。長い年月を経て行き着いた果ては刑務所だった。やがて男は脱獄し、その足で女と再会した。だか彼女は人妻となっていた。修羅場となり、男は女の夫を殺害。まだ未練を残していた女は、愛する男と共に逃亡することを決意する。

1956年発表作で、日本のミステリファンに読み継がれてきた作品のひとつ。殺人を犯した男と女を軸とする三人称、二人の痕跡を追う孤独な刑事の一人称で交互に構成。刑事は、追い詰められいく男への共感の度を次第に深めていくのだが、その素性は最後に明かされる。しかし、この時代ならではの〝意外性〟なため、今読めば古さは否めない。また、この名無しの刑事に翻訳者は「ぼく」という一人称をあてているが、新米警官ならともかく「私」を使うべきであり、最後まで違和感があった。プロット自体に大きな捻りは無く、サスペンスも抑え気味。悲劇的な物語だが、文章があまりにも地味で、情感が流れない。起伏の乏しい展開のため、「追う者と追われる者の息づまる攻防は、そのまま複雑なアメリカ社会に苦悶する人間の縮図である。一見単純な構成の中に秘められた最終ページの恐るべき感動」という創元の惹句は、あまりにも大袈裟過ぎると感じた。

2016/02/28

死んだと思った元夫が現れ、現在の夫を殺してしまう。今でも元夫を愛していた女は二人で逃げ、変名を使ってもう一度結婚した。一方、この殺人事件を担当した刑事が彼らを追う。

逃げる二人は三人称で描かれ、追う刑事は一人称で描かれる。この二つの物語が交互に描かれ、その距離がだんだんと縮まっていく。ついに二人は追い詰められ、刑事が彼らを逮捕に向かう。男は刑事に向かい銃を撃ち射殺される。しかし、男の銃の弾丸は女によって空包に代えられていた。最後に刑事が黒人であったとわかる。

刑事の物語は一人称であるため、その外面描写はない。しかし、他の刑事や、上司とのやり取りのなかに遠慮や疎外感のようなものが現れている。これが最後に黒人だとわかるシーンで生きてくる。ただ、小説全体との関連がどの程度あるかという点で疑問が残る。

2017/08/16

　先日ヒアリングについて調べていたところ、大事なことの一つに、

　「相手の話すことを素直に聞くこと」

　というのがあった。当たり前のことのようだが、人は先入観を持ちがち。そしてそれに判断を狂わされる。こう言っているに違いない。こんな人のはずだ。
　それを持たずに、相手の話を、まずはただただ素直に聞くことが大事ということ。

　本を読むことも同じ。誤った先入観を持って読み進むことは失敗。
　あれやこれや、考えを巡らしながら読む楽しみもあることはあるが、この作品に関してはやめた方がいい。

　素直に読むべし。最後まで一息に。時間をかけすぎたのも失敗だった。

　残念。

2009/10/07

犯人もわかっている、動機もわかっている、なら刑事コロンボみたいな内容？と思いきや、逃げる側の心理と追う側の心理を克明に描いてあるサスペンスでした。本格推理小説というよりはサスペンスの一種か・・・。

2009/10/04

Amazonや本のリビューから。構成が交互で独特らしい。"この追う者と追われる者の息づまる攻防は、そのまま複雑なアメリカ社会に苦悶する人間の縮図である。"

"緻密な(ディテール)構成による哀しみ(「人間の真の気持ちはわからないものだ」)"