1,800円以上の注文で送料無料

人形になる の商品レビュー

3.5

8件のお客様レビュー

  1. 5つ

    1

  2. 4つ

    3

  3. 3つ

    3

  4. 2つ

    1

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2022/08/27

私は気持ちの揺れ動きを、正確に、できるだけ簡易な言葉で表現しようと努力する作家が好きで、この人もその系列だ。限定された人間関係で、相手に愛されるために自分を制限して相手の思う型になろうとする夏生は「生の喜び」を見出す。それが側から見て「違う」と思われても彼女の生きがいならそれでい...

私は気持ちの揺れ動きを、正確に、できるだけ簡易な言葉で表現しようと努力する作家が好きで、この人もその系列だ。限定された人間関係で、相手に愛されるために自分を制限して相手の思う型になろうとする夏生は「生の喜び」を見出す。それが側から見て「違う」と思われても彼女の生きがいならそれでいいのでは。いや、健康な体があれば違ったのだ。いや、もっと重い障害を得ようと誤って命を失くした人の気持ちも分かる。正解を見つけるのではなく、あなたはこう生きて幸せなのね、と認めることが大切なのか。価値観の沼にどんどんはまっていく。 もう一編は、新人、超新人の登場がまだよく腑に落ちないのでこれからもっかい考えるとして、萩尾望都も言ってたようにすごい母親については、ああ、分かるな、と思った。どの娘も母に対して同じように感じているのであれば、女は同性に対して支配しようとする本能がキツくあるのではないか、と思ってしまう。嫁姑も同様。母は話がわかるふりをして、娘が実践しようとすると上から虫をつぶすようにバンバン手のひらを広げて叩いてくる。それを思い出した。 95

Posted byブクログ

2011/03/24

生々しくエグいはなしだが、サクサク読めた。二作品収録されているが、どちらも結末にもう一ひねり欲しい。

Posted byブクログ

2010/10/19

歩くことも出来ず人工呼吸器が手放せない私。 双一郎に恋をし世界が広がる。パートナーとして苦楽を共にしたい、人間として生きたい。しかし双一郎が求めているのは人形のような相手。 一人でいる空虚さに押し潰されるより私は双一郎といることを選ぶ。心を持たない人形になって。それが私の生きてい...

歩くことも出来ず人工呼吸器が手放せない私。 双一郎に恋をし世界が広がる。パートナーとして苦楽を共にしたい、人間として生きたい。しかし双一郎が求めているのは人形のような相手。 一人でいる空虚さに押し潰されるより私は双一郎といることを選ぶ。心を持たない人形になって。それが私の生きている証拠だから。 愛の定義はそれぞれだがもっと別の生きている証はないのだろうか。ぞっとする愛の形だ。

Posted byブクログ

2009/10/17

久々にはずれ。 ありきたりな展開が悪いとは思わないし、文章が素晴らしければ、平易な展開なんて気にならないけれどこれは別。安直で倒置法ばかりの文章にイラァ……。

Posted byブクログ

2009/10/04

「お人形さんみたい」 と、いうのは褒め言葉なんだろうか。 お人形、というのはたいてい目鼻立ちが整っていて、 髪の毛も麗しく、美を真骨頂とする 「人」の「形」を模したもの。だから、褒め言葉には違いないのだ。 だって、後に続くではないの。 「かわいいー」 って。 「かわいい」は...

「お人形さんみたい」 と、いうのは褒め言葉なんだろうか。 お人形、というのはたいてい目鼻立ちが整っていて、 髪の毛も麗しく、美を真骨頂とする 「人」の「形」を模したもの。だから、褒め言葉には違いないのだ。 だって、後に続くではないの。 「かわいいー」 って。 「かわいい」は嬉しい。 愛でられているから。そこに、言葉に課視線にかは定かならずとも、 わずかでも愛を感じる。 愛されるのは嬉しい。 でもちょっと待て。 「かわいい」には「かわいそう」とか「不憫だ」といった 憐みの情もある。意味としては通用する。 憐れみは、=愛とはなり得ないのではないか。 少しずつ少しずつ話が横道に逸れていっていますが。 この間「お人形さんみたい」と言って頂いて 褒められたことに嬉しく恐縮し 相手の方をばしばし叩いてしまったのだけれど、 そのとき、ふと思い出したのが去年読んだこの小説でした。 医療系のエッセイやら小説やらを探して貪ってた時期があって 「人工呼吸器なしでは生きられない女のひとの恋」という枠組みと、 萩尾望都の帯文に 好奇心をぞくぞく、撫でられて購入。帰りの電車と、寄り道したカフェで 一気に読み終わってしまった。 不快感が残った。 それは恐怖にも似ているかもしれない。 スティーヴン・キングの「ミザリー」を読んだ時の恐怖に、少し似ている。 身体の芯をぐっと掴まれて、それこそ身動きできない状態にされ、 じわじわと麻痺していく中で相手の声と舌なめずりだけが耳の奥に響くような 生理的な不快感。 誤解なきよう、 「つまらぬものを読んでしまった…」というそれとは、 まったく別種の、文章によって生理現象を支配されてしまう!という 幸福な体験を、この小説でしたわけです。 そして、 身動きが取れない中で一つの事実に遭遇する時の火花は ブリジット・オベールの「森の死神」の、痛ましさの中の閃きにも通じる。 ただ、前者には事件解決の希望が握られているが、 この作品では、主人公に痛ましい決意(その名は、諦めという)を迫る。 一貫して主人公・夏生の視点で描かれているので、 彼女の気分によって周囲の登場人物描写が変貌し、転回ていく様がたまらない。 これだけ恐怖と不快感と悪意に満ちていながら、ストーリーが重たい、 シリアスなだけのドラマにならないのは、 夏生の視点がひどく純粋で、偏見に満ちながらも醒めているからなんでしょう。 かわいい悪意もあったもんだ。

Posted byブクログ

2009/10/30

 初の矢口敦子でした。  「人形になる」はちょっと予想通りの展開すぎて退屈だったかな。どちらかというと「二重螺旋を超えて」の方が面白かったと私は思う。新人対超新人っていう構図がちょっと突拍子もなく出てきちゃってた気がするけど、まるで別個の人格を備えてしまったかのような卵子とネズミ...

 初の矢口敦子でした。  「人形になる」はちょっと予想通りの展開すぎて退屈だったかな。どちらかというと「二重螺旋を超えて」の方が面白かったと私は思う。新人対超新人っていう構図がちょっと突拍子もなく出てきちゃってた気がするけど、まるで別個の人格を備えてしまったかのような卵子とネズミの胎児の目がこええ。  両方を通じてこの作者のいいところは、女性特有の感じ方とか、ドロドロした内面を的確に捉えそして表現できるところだと思う。

Posted byブクログ

2011/07/10

2008/8/9 新大阪駅のBooks Kioskにて購入 2011/7/9〜7/10 久しぶりの矢口作品。 人の心の葛藤を描くことに定評のある矢口さんの短編集。重い障害者の恋愛を描く「人形になる」、と子供を我がモノとして扱う母や姉に反発心を抱く未婚の女性を描く「二重螺旋を超え...

2008/8/9 新大阪駅のBooks Kioskにて購入 2011/7/9〜7/10 久しぶりの矢口作品。 人の心の葛藤を描くことに定評のある矢口さんの短編集。重い障害者の恋愛を描く「人形になる」、と子供を我がモノとして扱う母や姉に反発心を抱く未婚の女性を描く「二重螺旋を超えて」。どちらの作品も主人公とは違う視点から物語を眺めると世界がひっくり返り違った怖さがでてくるのが上手い。

Posted byブクログ

2009/10/04

女にとってはリアルにエロい中編二作収録。表題作、わずか20ページほどのうちに胸を揺すぶられ泣かされて、最後まで現実感を失わないしっかりした文体なのに倒錯と耽美の香りもしたりして、あれーなんだこれすごい好みだわ。

Posted byブクログ