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われらが歌う時(上) の商品レビュー

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2013/09/25

音楽小説であり家族小説でありアメリカの人種格差を描いた小説でもある。そこに時間論や相対性理論が絡む、壮大な大河ドラマ(風に頭の中では再生)。所感としては、読み心地は エコー・メイカー に近いかも。  初恋や両家顔合わせ食事会の場面なんかはユーモアたっぷりだったり、登場人物がなん...

音楽小説であり家族小説でありアメリカの人種格差を描いた小説でもある。そこに時間論や相対性理論が絡む、壮大な大河ドラマ(風に頭の中では再生)。所感としては、読み心地は エコー・メイカー に近いかも。  初恋や両家顔合わせ食事会の場面なんかはユーモアたっぷりだったり、登場人物がなんの前触れもなく方言を喋りだしたりと緊張感のある場面とのバランスがとてもいい。ただ、長編は体力(と精神的集中力と思考の持久力とエトセトラ)が必要。学んだ。でも文章が濃ゆくて楽しい。どのセンテンスにも必ずといっていい程ヒネリが入っているのが嬉しい。  近頃ストレートないい話がタイミングもあるのか、カウンターパンチをくらうような衝撃を受ける事もあるのだけど、文章がここまでいいと衝撃は緩和される。 下巻へ。

Posted byブクログ

2009/10/04

リチャード・パワーズの小説は『舞踏会へ向かう三人の農夫』、『ガラテイア2.2』、『囚人のジレンマ』と、日本語に翻訳されたものはすべて読んできた。今までの作品同様、本作でも時間を行き来しつつ物語が語られて行く。行き来する時間の中で語られるのは、ユダヤ系ドイツ人男性と黒人女性が、19...

リチャード・パワーズの小説は『舞踏会へ向かう三人の農夫』、『ガラテイア2.2』、『囚人のジレンマ』と、日本語に翻訳されたものはすべて読んできた。今までの作品同様、本作でも時間を行き来しつつ物語が語られて行く。行き来する時間の中で語られるのは、ユダヤ系ドイツ人男性と黒人女性が、1939年にワシントンで恋に落ち、結婚し、築かれてゆく家族の姿だ。  タイトルにもあるように歌が大きな役割を担っていて、それと同様に時間も大きな意味を持つのだけど、音楽と時間の組合せが物語に深みを与えている。『舞踏会へ向かう三人の農夫』は、一枚の写真をもとに時間を行き来するが、ここでは音楽をもとに時間を行き来している。両者を比較することで、音楽と時間の親密な関わりに気付かされる。  だが、一番のテーマは人種問題だろう。人種問題があることは、知っていたが、日本にいる限りそれを実感することはない。巻末の訳者あとがきにも以下のようにある。 本書を読み終わる頃には、読者は経験不可能で想像不可能だったはずの二十世紀アメリカの人種問題を生きてしまっている。  上下巻の一千頁を超える長編であることで、手を付けにくかったけど、読んでよかった。

Posted byブクログ