陸奥爆沈 の商品レビュー
昭和18年6月、瀬戸内海の桂島泊地で謎の爆発で沈没した戦艦陸奥。なぜ事故が起きたかを丹念に検証する作品。 最先端の技術を用い、国と国の争いで抑止力として重要な存在。浮かべる海城の戦艦。しかしながらそれを動かすのは人。帝国海軍の過去の歴史から同種の事故が頻発していることを筆者は知...
昭和18年6月、瀬戸内海の桂島泊地で謎の爆発で沈没した戦艦陸奥。なぜ事故が起きたかを丹念に検証する作品。 最先端の技術を用い、国と国の争いで抑止力として重要な存在。浮かべる海城の戦艦。しかしながらそれを動かすのは人。帝国海軍の過去の歴史から同種の事故が頻発していることを筆者は知る。 技術の極致、攻撃力の象徴の戦艦を支えたのは生身の人間。明治維新から敗戦まで、大日本帝国を支えた下級兵士たち。人々の意図を超えて暴走する機械。 吉村昭ならではのカタストロフィ物を堪能できる作品でした。
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昭和18年、岩国市柱島泊地で発生した戦艦「陸奥」の謎の大爆発。記録文学の第一人者が、昭和44年に残存する資料やインタビューを通じて、謎解明に挑む。地道な調査を通して見つけ出した事実とは?意表をつく展開で一気読み。これぞドキュメンタリーという傑作
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興味があるジャンルなので。 帝国海軍が誇る戦艦、長門級二番艦「陸奥」。 呉沖で大爆発を起こし、爆沈した。 この事実は最高機密となる。 また、爆沈の原因は何か? など、作者は最初全く書くつもりはなかった。 誘われて訪れた柱島で慰霊碑を見て、何かを感じ、困難な調査を行って本書に...
興味があるジャンルなので。 帝国海軍が誇る戦艦、長門級二番艦「陸奥」。 呉沖で大爆発を起こし、爆沈した。 この事実は最高機密となる。 また、爆沈の原因は何か? など、作者は最初全く書くつもりはなかった。 誘われて訪れた柱島で慰霊碑を見て、何かを感じ、困難な調査を行って本書にまとめた。
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吉村氏にしては珍しく、筆者目線で過去の出来事に迫り、調査の経緯が描かれている。 日本軍の下の階級の者の中には、前科がある者もいたことを初めて知った。 規律正しく思える軍隊にも、実は色々いて、人間臭い世界があったらしい。
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太平洋戦争開戦時、日本は12隻の戦艦を保有し、その大半は戦場で沈没しました。最大級の「大和級」に次ぐ「長門級」の2番艦「陸奥」は戦場以外で失われた数少ない戦艦で、「陸奥」は広島県柱島泊地(基地のこと)における爆発事故によって沈没しました。 本書はその爆発事故の原因究明にあたった当...
太平洋戦争開戦時、日本は12隻の戦艦を保有し、その大半は戦場で沈没しました。最大級の「大和級」に次ぐ「長門級」の2番艦「陸奥」は戦場以外で失われた数少ない戦艦で、「陸奥」は広島県柱島泊地(基地のこと)における爆発事故によって沈没しました。 本書はその爆発事故の原因究明にあたった当時の海軍関係者への取材をもとに、「陸奥」以前にも同じような爆発事故で沈没した艦船のケースにも言及しています。 日本海軍にとって、戦時中に国内基地で主力艦を失うというのは大変ショックな事件でした。発生当時、米軍(潜水艦や航空機)による攻撃、設計上のミス(漏電による火薬引火など)、人為的な問題(規律違反によるミスや、放火)などあらゆる可能性を検証しています。証拠を集めるために沈没した艦内へ過酷な条件下で潜水夫を何度も派遣したり、積載されていた火薬や砲弾の引火、爆発の実験も行われた様子が描かれています。そのような徹底的な調査の結果、最も可能性が高いとされたのが乗員による放火でした。 規律のとれた組織である海軍の、しかも軍艦の艦内で放火などが可能なのかと著者も当初は疑問を抱きますが、「陸奥」以前にも6回もの類似の事故があり、そのほぼ全てが放火、あるいは失火であることが判明します。 軍法会議の記録などを詳細にたどると、昇進が見送られて腹いせにやったケースや、日常の厳しい訓練で上官への恨みが募った挙句に行動に移したケース、艦内での金品の盗みが発覚するのを恐れ証拠隠滅を図ったケースなど、非常に人間臭い動機であることが明らかになっています。 いかに強固な艦船を建造しても、それを運用するのは”人”ですから、職場(この場合は艦船)の人間関係や、メンタルヘルスを維持することの重要性を再認識させられるノンフィクションでした。
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ドキュメントタッチの作品で、著者自身が取材を進めていく様が描かれている。旺盛な取材力で、この時期に後世に残してくれたのはありがたい。戦艦が、多種多様な人間を詰め込んだ容器と形容したのは慧眼。2021.3.6
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『陸奥爆沈』 吉村 昭 著 読了 一冊読み始めると、次々に関連書籍が紹介されるのは Kindleの最大の利点 そのおかげで、吉村昭が止まらない 事実上のデビュー作である 「戦艦武蔵」から始まり、「零式戦闘機」 「大本営が震えた日」と 太平洋戦争モノが続いてきたがために また、Kindleにおススメされての本書 笑 昭和18年6月、太平洋戦争の真っ只中 瀬戸内海柱島沖に停泊中だった「戦艦陸奥」 巨大な戦艦が、爆音後たった2分で 1121人の乗組員と共に海底へと呑み込まれていった その原因は、果たして… 農業専門雑誌が企画した 岩国市を紹介するための紀行文執筆の為に 訪れた地だった 「柱島に行ってみませんか」という編集者 「戦艦武蔵」で柱島泊地と、何度も書きながら 一度も訪れたことがなかった事 柱島が、今回の取材目的地である 岩国市に属しているという事が 重い腰を上げるきっかけとなった と、本書を執筆するにあたって あまり乗り気でなかった吉村氏 その現れなのか 今までの記録小説とは異なり 取材ノートに近い形態をとっている 柱島は、昔、流人の島であった 罪人は、生きたまま大きな壺を被せられて 地中に埋められた 戦争中は、海軍の防備地帯として 島は、厳重な監視下に置かれた 多くの島が点在していて、艦艇が傍観されることを防ぎ 海面も穏やかで、投錨地としての条件が揃っていた 呉海軍工廠や、弾薬、糧食その他を補給する 呉軍需部も近く、その上 大燃料庫ともいうべき、徳山要港からの 重油供給を受けられるという利点にも恵まれていた また、戦艦武蔵を始めとする数々軍艦も 柱島を根拠地に、各訓練を行う 日本海軍にとって、極めて重要な根拠地であった 太平洋戦が勃発してから 「陸奥」は、日本海軍の主力艦として温存されたまま 昭和18年6月8日 火薬庫爆発事故によって、呆気なく爆沈 戦局はミッドウェー海戦の惨敗に続いて ガダルカナル島の死闘も アメリカの勝利となって 泥沼化していた 日本の代表的戦艦「陸奥」の喪失は 日本海軍にとって、衝撃的な事件だった 敵潜水艦の電撃による爆沈か それとも、他の理由による沈没か 客観的に判断できる資料は何もない中 吉村氏は、まず生存している元乗員から 何らかの手がかりを掴もうと、試みる 戦後、20年以上を経て 生存者も、どんんどん減っていく中 「陸奥」元乗員は異常に少なかった と、言うのも 「陸奥」爆沈は、海軍にとって極秘事項 生存者は、下士官兵が殆どで 「長門」に収容された後、そのまま南洋諸島に送られ 戦死した為だった あらゆる伝手を探った結果 過去にも、見逃せない数の戦艦が爆沈している事実を突き止め得た吉村氏は 「陸奥」の爆沈に関して 一つの結論にたどり着く 吉村作品の中で、数々の戦記物を好んで読んできたが 結果、いつもやるせない気持ちになる 「戦艦武蔵」も「大本営が震えた日」も「零式戦闘機」も 秘匿が最優先になる故 膨大なモノと人が犠牲になる不条理 平時では、全く想像が付かないような決断を 当たり前のように下す 戦争というものの恐ろしさは 小さなうねりが重なり合って やがて大きなうねりとなって 狂気が細部まで浸透してしまう事だ 歴史は繰り返される 戦争を体験した世代が 殆ど居なくなってしまうからこそ 吉村作品は、読み継がれていかなければならない #陸奥爆沈 #吉村昭 #戦闘以外での沈没理由に閉口する #第二次世界大戦 #吉村昭作品にハズレなし
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詳細な調査により紡ぐ戦艦陸奥沈没の真相に迫る! まあ結局は真相には辿り着けないのだけれども、当時の構造的な問題を掘り下げる筆致は、そうなんじゃないか? と思わせる...。現代の人事施策にも当て嵌まる著者の提言のように思えてならない。
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戦艦は鉄の塊だが、実は鉄の皮を被った人間の塊だと思い知る。日本海軍内部での窃盗などの腐敗の歴史にも驚く。いかなる組織でもトップや組織の形を外から見るのではなく、組織の末端の個々人まで見つめる必要があるとあらためて感じる。
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昭和十八年六月八日、戦艦陸奥爆沈。 死者、千百二十一名。 筆者の努力により、次々に明らかになる謎。 果たして、ひとりの軍人による行為で、一隻の戦艦が瞬時に沈没したのだろうか。 今も残る謎。 証拠は、塵となって消えてしまった。
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