小人たちがこわいので の商品レビュー

ジョン・ブラックバーン(著者),菊池光(著者)

2012/03/16

北アイルランド、リンスリート河口湾で起きた鳥や海棲動物の大量死。原因は環境汚染と考えられていたが、外務省情報局長のカーク将軍は友人で細菌学者のマーカス卿に調査を依頼する。疑わしい合成樹脂工場D･R･プロダクツの経営者は、マーカス卿の古い友人ダニエル・ライダーだった。ライダーは工場のあるトレフリス渓谷の亡き地主の娘メガンと結婚していたが、ひどく閉鎖的な村の住人からは疎まれていた。

空高くそびえる山にも／藺草におおわれた谷へも／誰も猟に行く勇気はない／小人たちがこわいので

付近に伝わる童謡の歌詞の通り、渓谷の≪騎士の丘≫の北斜面には草を食む動物の姿はなく、迷い込んだ人間の身には災厄がふりかかるという伝承があった。程なく、ダニエルが崖から転落して死亡する。ダニエルの死に疑念を抱いたマーカス卿は調査に乗り出す……。

動物たちの不可解な死、続発する殺人、ナチスの亡霊や東西冷戦の影、そして不気味な伝承……読み進めるうちに謎が次々に現れるが、それがどう結びついていくのか、緊張感を保ったまま最後まで安易な予想を許してはくれない。
ミステリー、サスペンス、オカルトといった要素が絶妙に組み合わされた構成は一読の価値あり。

……とはいえ絶版なのが何とも残念。

2010/09/07

空高くそびえる山へも
藺草におおわれた谷へも
だれも猟に行く勇気はない
小人たちがこわいので

冒頭に引用される童謡だけでも雰囲気は充分。殺人、海洋汚染、次々起こる不可解な事件と民間伝承の関わりは？。科学、宗教、政治、民俗学etc、様々な要素が活かされたミステリ風味の物語は、終盤に急変し一気にホラー展開へ。、全編に漂う不穏な空気も素晴らしい。

モダンホラーの原点とも称される傑作。

2009/10/07

タイトルに惹かれて読んだ。
民俗学的な味付けがしてある本には弱い。
ファンタジー系？

SFは読みつけていないせいか、細部によく飲み込めないところも残ったが、
適度な長さで、展開も速く、好感触。ループするラストの恐怖はホラーの王道ですね。