投降 の商品レビュー

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2019/02/02

レイテ湾海戦後戦艦大和を退艦した著者は、激戦地フィリピン(比島)への転任を命ぜられる。比島の要地は既に米軍の手に落ち、日本軍は北部・西部の山岳地帯へと潰走中であった。著者も総員25名の小隊を率いて死線を彷徨い、米軍の砲爆撃、マラリア、飢餓、そして皇軍同士の略奪の中で次々と部下を失...

レイテ湾海戦後戦艦大和を退艦した著者は、激戦地フィリピン(比島)への転任を命ぜられる。比島の要地は既に米軍の手に落ち、日本軍は北部・西部の山岳地帯へと潰走中であった。著者も総員25名の小隊を率いて死線を彷徨い、米軍の砲爆撃、マラリア、飢餓、そして皇軍同士の略奪の中で次々と部下を失う。西海岸から南シナ海への脱出行も米軍に阻まれ、一縷の望みを絶たれた著者はついに部下3名とともに投降する。連合艦隊が壊滅する様を目撃していた著者は、日本の敗戦は必至であり早期降伏こそが犠牲を最小限に抑える道であると対日宣伝工作に進んで協力した。その原動力は、「天皇陛下のためにここで死にます」と投降を拒否した兵士たちの姿であり、彼らを死地に追い込んだ日本の軍国教育に対する激しい憤りであった。しかし、戦後復員した著者の眼に映ったのは、戦争が終わっても何も変わらない日本人の精神風土であった。あとがきにも迸るその想いが、著者を「不戦兵士の会」を中心とする反戦運動へと駆り立てたのである。

Posted byブクログ