私の実践経済学 の商品レビュー

髙橋亀吉(著者)

2017/04/24

［天才外科医のごとく］類稀なる経済眼を持ち、戦前から戦後にかけての長きにわたって日本のエコノミストの第一人者として活躍した高橋亀吉。経済の分水嶺において、決して理論の虜として振る舞うことなく、どのように分析するべきかを披瀝した一冊です。実践経済を身につけるに至った波乱万丈とも言える高橋の半生についても頁が割かれています。

高橋氏が記者や研究者、さらには政策立案のための顧問まで歴任していたためか、机上の論としてだけでは終わらせない「重み」と「広がり」を感じました。「経済学ってなんのためにあるのだろう......」と一度でも考えたことがある人にはぜひ手にとっていただきたい作品です。また、高橋氏の方向性を定めたアダム・スミスのエピソードが短いながらも本当に奥深い。

〜あらゆる経済理論なり、経験なりというものは、一定の経済基盤を前提として成立したものであること、したがって、その根本の経済基盤に変化が起こると、その経済理論も経験も、そのままでは、かえってじゃまになる。事態の変化に照応して、これを常に訂正してゆかねばならぬ、という哲学を身につけておくことである。〜

（私が言えることじゃないと思いますが）本当に天晴れとしか言いようがない☆５つ