紫式部 の商品レビュー
紫式部の私家集に沿って紫式部の半生を辿ろうという内容。国文学は疎いが、平易な文章でわかりやすかった。以前に斎藤茂吉の万葉集についての岩波新書を買って読んだが、ひどかった。何が言いたいのかさっぱり伝わってこないし、説明が説明になっていないし、結局上巻読みさして手放した。今回もそれだ...
紫式部の私家集に沿って紫式部の半生を辿ろうという内容。国文学は疎いが、平易な文章でわかりやすかった。以前に斎藤茂吉の万葉集についての岩波新書を買って読んだが、ひどかった。何が言いたいのかさっぱり伝わってこないし、説明が説明になっていないし、結局上巻読みさして手放した。今回もそれだったないやだなと思いつつ読んだが、当時の平安貴族の風習や政治的な話、歌詠みにおける決まりごとなど細かくおりおりに触れられていて、あたかも歌を読んで理解できたかのような錯覚をした。巻末に紫式部の家集の全文が掲載されていて、改めて通しで読んでみたが、さっぱりわからなかった。著者の解説がよかったんだなと実感した。 紫式部については源氏物語を書いたらしいということ以外知識がなかったので、特に紫式部の一族が藤原道長を取り巻くように姻戚関係を結んでいたことなどは意外で目から鱗だった。ところが紫式部は道長の偉そうな振る舞いに反感を覚え、帝なきあとの后とともに反道長的な立場にいたのだとか。帝が源氏物語から歌を引いて后に贈ったというのも意外だった。そもそも源氏物語はうもれて後世になって注目されだしたくらいに思っていた。 夫に先立たれてからの紫式部は、世の中を憂いて悶々とし、宮仕えに召されてからも悶々としていたらしい。生きていて何になるのかと自問自答するような歌や日記も多いらしい。これも意外だった。かたや娘の賢子は女房が板について、身分もぐんぐんあがり、偉いとこの人と結婚して、人生を謳歌したが、思い煩うことが少なかった所為か、詠んだ歌はどれもフツーらしい。 私家集を基調としているのでそこに収録された歌が本書では主眼になっているが、後半には源氏物語についても言及されている。岩波新書にもその名もズバリ『源氏物語』(秋山虔著) があり、それも面白かったが、本書のみかたも中々興味深かった。
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