カント全集(11) の商品レビュー
岩波版全集11巻。1797年に出版された『人倫の形而上学』はカント実践哲学の集大成である。内容的には、道徳的なものを構成する法論Rechtslehreと徳論Tugendlehreの2つに分かれるが、それら双方に関わる用語の定義などが置かれている。この部分は『実践理性批判』で明らか...
岩波版全集11巻。1797年に出版された『人倫の形而上学』はカント実践哲学の集大成である。内容的には、道徳的なものを構成する法論Rechtslehreと徳論Tugendlehreの2つに分かれるが、それら双方に関わる用語の定義などが置かれている。この部分は『実践理性批判』で明らかにされた諸原理などの要約とも考えられる。批判期以来の実践哲学の根拠付け、フランス革命以来の政治社会論、実践哲学を体系化するための議論の豊富さの追求、こうした山積する課題にカントがいかに答えているかは、容易に見通せるものではない。しかし、原理論以外にも個別的問題に関する豊かな洞察が含まれており、その点では『基礎づけ』や『実践理性批判』よりも読みやすいかもしれない。ともあれ、熟読されるべき古典だろう。
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