文化大革命十年史(上) の商品レビュー
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1996年(原本1986年)刊行。著者らはいずれも第2次天安門事件で離中。厳家祺は趙紫陽が指導した中国中央政治体制改革事務所の元所員で、米コロンビア大学訪問研究員。高皋は元中国科学院哲学社会科学部の医師で、厳の妻。◆タイトルどおり1966年より開始された中国文化大革命を、その前史を含め、後の改革派趙紫陽政権の下、中国人自ら批判的に分析解読した書。上下巻中の上巻。①文革前史の毛沢東三面紅旗(大躍進・人民公社政策)の失敗と劉少奇の修正。ここから毛沢東の劉少奇批判、林彪の台頭と激烈な権力闘争。林彪クーデターへ。 その後のクーデター失敗に伴うソ連亡命は、飛行機事故で林彪の死に繋がるまで。◆まぁ「毛沢東秘録」「マオ」を読んでいるので権力闘争部分については再確認。◇「大地の子」に触発されて読みだしたが、いわゆる市井の人々に関しては五章の20頁程であまり書いていない。◆①結局、人物批判合戦に終始。人治の故か。②大衆動員も林彪の「大衆(特に学生)の無知・単純・好奇心旺盛・衝動性」に依拠した煽動が大いに影響。③批判の対象が毛沢東の語録との整合性のみ。事実・証拠に無関心。④かつ毛沢東の無謬性が問題を拡大。 権力者は批判されるべき存在とされていたら、こんなことにはならなかったろう。⑤政治において第一義的に批判されるべきは政策と、その政策を反映したルール(法がその典型だが)。しかし、政策がルール化されていない場合には、批判の対象が発言などだけになってしまう。◆文革の反知性主義の極北という印象は変わらず。また、反面教師としての分析は不可避かな。
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