増補 豪華客船の文化史 の商品レビュー
著者は大阪商船三井船舶(株)出身の海事史研究家で、最近ではさる8月4日に横浜の日本丸メモリアルパークにて「豪華客船ノルマンディーの光と影」と題して講演を行った。 著者は客船、商船に関連した著書をこれまで多く執筆してきているが、本書が最新刊。本書は定期航路に就航する定期客船を取り上...
著者は大阪商船三井船舶(株)出身の海事史研究家で、最近ではさる8月4日に横浜の日本丸メモリアルパークにて「豪華客船ノルマンディーの光と影」と題して講演を行った。 著者は客船、商船に関連した著書をこれまで多く執筆してきているが、本書が最新刊。本書は定期航路に就航する定期客船を取り上げている。定期豪華客船となると、どうしても北大西洋で繰り広げられたブルーリボンの話がまず頭に浮かぶが、本書は世界史とのタイトルにあるように、北大西洋の蒸気船定期運行から始まり、世界各地向け開拓された定期航路の歴史、第一次、第二次世界大戦時の様子もカバーされている。船の歴史に限らず、往時の世界の動きや時代背景などもコンパクトにまとめられている。白黒ながら客船の写真も豊富に掲載され、また、船の生涯がわかる解説も良い。なお、前書きにて著者は、商業航空路の発達により定期客船の舞台はほとんどなくなってきており、代わりに遊覧目的のクルーズ船が興隆してきているが、これら最近のクルーズ客船は取り上げていないと断っている。450ページの単行本で少々厚いが、客船の通史をまとめて理解するには好著と思う。なお、残念なことに客船名の索引が無いのはいかにも惜しい。 著者は、今から四半世紀遡る1993年に「豪華客船の文化史」 (NTT出版)を上梓しており、これは著者のエネルギーと客船への情熱を感じさせる本。本書には、「豪華客船をめぐる年表」(一般情勢、海運情勢を世界と極東/日本と対比させている)と船名の索引が英文表記とともに掲載されている。2008年に増補版が同じくNTT出版から販売されており今でも入手可能である。愛蔵書としての価値はこちらの旧著の方があるだろう。
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