自動車産業の終焉 の商品レビュー
私の物心がついてから自動車は石油燃料(ガソリン、軽油)で走るものでしたが、自動車が興隆する前には電気自動車の時代があった(1896年のアメリカには電気自動車のみ、p248)こと、最近の電池技術の進展によりハイブリッド車が進化した電気自動車が現在の自動車に取って代わる可能性があるの...
私の物心がついてから自動車は石油燃料(ガソリン、軽油)で走るものでしたが、自動車が興隆する前には電気自動車の時代があった(1896年のアメリカには電気自動車のみ、p248)こと、最近の電池技術の進展によりハイブリッド車が進化した電気自動車が現在の自動車に取って代わる可能性があるのではと思うようになりました。 馬車から自動車に代わるときには、馬車業界は消滅してしまったようですが、アメリカでは鉄道会社を石油会社が買収したことで自動車王国を築きあげて、電気エネルギー主体の世の中になるのを防ぎました。従って自動車の命というべき動力部がエンジンからモータに変わろうとしている時の石油会社と自動車会社の対応は特に注目されると思います。 この結果は多分私が社会人を続けている間にある程度の決着はつくと思われますので、本書をはじめとした本や各種情報に接することで今後の姿を探っていきたいと思いました。 特に、最近苦境に立たされている感のあるトヨタがGMとの合弁工場の跡地に電気自動車を製造する契約をテスラ・モーターズと交わしたニュースは衝撃的でした。 以下は気になったポイントです。 ・ヘンリー・フォードが20世紀初頭に作ったT型は、現在アメリカで販売されている標準的な新車よりも燃費が良かった、燃費の良い自動車や代替燃料を開発しようとする政府の動きに反発してきた(p10) ・自動車産業が成長を始めたのは、1915年に分割払いである、また賃金が引き上げられた(1920~29年で実質26%増加)のは大きい(p30) ・ビックスリーが順調の業績に見えたのは、販売奨励金と、自動車ローンの金利収入であったので、製品開発や投資を行っている日本メーカに負けた、日欧のメーカは自動車で勝負、ビッグ3は取引(値引き)で勝負した(p48、68) ・アメリカ地質調査所は2000年に実際に調査を行って、ピークは20年先になるという結論を下した、国債エネルギー機関(IEA)も同様で、2030年までは不足なしとした(p95) ・石油メジャーはかつて強みにしていた技術から離れた結果、3種類のライバル会社(石油サービス会社、小メジャー、国営企業(株主の意向は気にしないで良い、p162))に力を与えてしまったことに後悔を始めた(p107) ・静かなエンジンを開発するという信念のもとに、問題の根本である、騒音(N)・振動(Vibration)・心地悪さ(Harshness)に取り組んだのはトヨタである(p136) ・貧困層の保護という観点から見た場合、資源のある国のほうが良くない、石油産業は農業に比べて多くの非熟練労働者を必要としないから(p150) ・食料も石油も予測に反して当たらなかったのは、現在の延長としてのみ将来を予測していて、それまでに講じられる対策の効果を考えていなかったから(p203) ・中国とアメリカの違いは、アメリカでは石油業界と自動車業界が結託して、公共交通の締め出しに成功した、中国は公共輸送機関の充実に取り組んでいるし、電動自動車(2005年の売上は1000万台強で、自動車販売数よりも多い)の導入もされている(p214) ・持続可能な交通システムで中国で構築する利点は、1)ガソリン自動車向けに多くの投資がされていない、2)国内市場が大きい、3)国家権力が強い、である(p222) ・ケニアやガーナでは、電気の明かりが広まりつつあるが、白熱灯ではなく、エネルギー消費の少ない発光ダイオード(LED)であり、電力源は太陽光である、これはリープフロッグ(蛙飛び)の例である(p225) ・ホンダ、フォード、GM、三菱では、予混合圧縮自己着火燃焼エンジン(HCCI)の技術に取り組んでいるが、これはガソリンを燃料とするディーゼル方式のエンジン、燃料と空気の混合気の点火を、スパークプラグでなく、ディーゼル方式の圧縮で行う(p252) ・2006年3月、フロリダ州シブリングのテストトラックで開催されたルマン式の耐久レースで、アウディのプロトタイプR10が、ディーゼル車として初めてガソリン車を破って優勝した、このときの燃料がシェルの開発したスーパークリーン(GTS)である(p265) ・アメリカではガソリンは高くなっていない、30年前とインフレ調整して比較すると、昔の方が高かった、1960年は1ガロン(3.8リットル)30セントだが、現在価格では2ドル(p315)
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転換期を迎えた自動車産業はどこへ向かうのか。 環境問題との関係で今後を予想しているが、金融危機後の自動車産業を巡る動きは、この本の内容よりも先に行っている部分があるかもしれない。言えることは、現在の自動車産業が衰退しても、自動車そのものは無くならないということかな。 自動車業界に...
転換期を迎えた自動車産業はどこへ向かうのか。 環境問題との関係で今後を予想しているが、金融危機後の自動車産業を巡る動きは、この本の内容よりも先に行っている部分があるかもしれない。言えることは、現在の自動車産業が衰退しても、自動車そのものは無くならないということかな。 自動車業界に興味があれば、読む価値はあるかもしれない。
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イアン・カーソン、ヴィジェイ・V・ヴェイティーズワラン著、黒輪篤嗣訳「自動車産業の次世代クルマ戦争に勝ち残るのはどこか」二見書房(2008) *多くの起業家や、業界内部の革新者や業界外部の人間がいま、イノベーションを加速させようと取り組んでいる。それはこれまで既得権益層である大...
イアン・カーソン、ヴィジェイ・V・ヴェイティーズワラン著、黒輪篤嗣訳「自動車産業の次世代クルマ戦争に勝ち残るのはどこか」二見書房(2008) *多くの起業家や、業界内部の革新者や業界外部の人間がいま、イノベーションを加速させようと取り組んでいる。それはこれまで既得権益層である大手の自動車メーカーや石油企業によって意図的に避けられてきたイノベーションだ。自動車産業は技術的にはもっと燃費のよい自動車を生産できたのに、そうはせず、燃費の良くない自動車を作り続けた。信じられないけれど、フォードのT型は現在アメリカで販売されている標準的な新車よりも燃費が良かった・・・。 * 台頭するアジアは、地球の破壊者ではなく、救い主になれる →アメリカが世界の経済や政治をリードする大国になるまでには、1870年から1918年までのおよそ50年を要したが、中国やインドの発展ぶりはその比ではない。中国は1978年の市場開放以来、年10%のペースで成長し、この10年で富は倍に増えた。 →シンガポール、タイ、韓国、台湾はの4カ国は急速な経済成長をとげ1世代で農耕社会からクルマ&マンションの社会へと変わった。
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タイトルと中身で少し印象が違っていて、 『アメリカの』自動車産業は終焉の方へ向かっている。 というのが正確です。 得られた知識は ・自動車の未来の動力は水素(燃料電池)であり、何十年も前から研究されているが、なかなか実用化までが遠い。 ・過去にGMが電気自動車などの新動力の開...
タイトルと中身で少し印象が違っていて、 『アメリカの』自動車産業は終焉の方へ向かっている。 というのが正確です。 得られた知識は ・自動車の未来の動力は水素(燃料電池)であり、何十年も前から研究されているが、なかなか実用化までが遠い。 ・過去にGMが電気自動車などの新動力の開発を行おうとしていたが、社内外の圧力によって力を入れることができなかった。 ・自動車会社と石油メジャーは密接に結びついており、アメリカ国内においてガソリンが安く販売され、排気量の大きなクルマが使用されるのは石油メジャーのロビー活動のお陰である。 といったところでしょうか。 一番興味を引いたのは電気自動車の開発が社内の抵抗で進まなかったというところです。 ちょっと説明すると、電気自動車というのは動力が電気でモーターで動きます。 (ミニ四駆みたいなものです) するとエンジンとかトランスミッションとかが一切必要なくなってしまうわけです。 つまり、今までエンジン開発に取り組んできた人々は自分たちの存在が脅かされるわけです。 自動車の心臓部分を作っていたと思っていたら、それが不要なものになるのです。 すると、当然のようにエンジン開発の人々は大反対し、ついでに石油メジャーも大反対し、電気自動車の開発は進まず。。。 いつの間にか環境重視の時代になると、置いていかれ、 今までのエンジン開発に関する技術をもっていないベンチャー企業までもが 電気自動車の開発に参入してきて、戦国時代となるわけです。 大企業病というか、会社がダメになっていく様子がリアルに感じることができます。 そういった意味では、自動車関係の仕事でない人にも、オススメな一冊です。
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内容自体は面白い。 でもなぜか結局エネルギーの話になる。 あまりタイトルと中身が一致していない。
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0811中日新聞 [評者]安藤 眞(自動車ジャーナリスト) ■石油依存への警告と方策 タイトルと副題から、またぞろ特定の技術やメーカーを過大評価して煽(あお)り立てる陳腐な本ではないかと思った。が内容はまったく異なり、そこには「自動車産業は終焉(しゅうえん)する」という結論も...
0811中日新聞 [評者]安藤 眞(自動車ジャーナリスト) ■石油依存への警告と方策 タイトルと副題から、またぞろ特定の技術やメーカーを過大評価して煽(あお)り立てる陳腐な本ではないかと思った。が内容はまったく異なり、そこには「自動車産業は終焉(しゅうえん)する」という結論も「次世代クルマ戦争に勝ち残るのは○○である」という結論も導かれていない。 これは、石油エネルギー依存に対する警告の書であり、同時にアメリカ産業界や起業家にエールを送り、さらには京都議定書の批准を拒否し続けている連邦政府と、それを操る自動車/石油産業ロビイストを告発し、アメリカ市民に決起を促す書と捉(とら)えるべきである。 三部九章からなり、北米ビッグスリーの凋落(ちょうらく)やトヨタが躍進した理由、原油を巡る石油業界の思惑から可採年数の検証、BRICs諸国の環境対策と将来の可能性など、内容は多岐にわたる。特に石油依存から脱却する可能性のある技術にはいくつか言及するものの、最後に対論を付して過剰な期待を抱かせないようにしているのは、この手の本にはあまり見られない良心的な部分だ。 逆にそれが、著者らの主張をわかりにくくしている感があるのは否めないが、言いたいことは第八章で書かれ、最終章で「二十一世紀のエネルギー政策が考慮すべき五つの原則」が示されている。 技術的な理解不足が散見されることと、上梓(じょうし)されたのが二〇〇七年上四半期−当時の原油価格は1バレル60ドルにすぎなかった−だったために、現実にそぐわなくなった提言があることは残念だが、化石燃料には外部コスト、すなわち、CO2による温暖化や大気汚染とそれに起因して費やされる医療費、エネルギー安全保障のための軍事費などを見込むべきであり、それが代替エネルギーと石油の公正な競争を担保するという指摘は、日本の環境政策を考える上でも参考になろう。 自動車技術者や経済人より、経済/運輸/環境部門の官僚や政治家に読んでもらいたい一冊だ。
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