文豪ミステリー傑作選(第1集) の商品レビュー

アンソロジー(著者),夏目漱石(著者),森鴎外(著者),志賀直哉(著者),谷崎潤一郎(著者),泉鏡花(著者)

2024/07/30

古い作品ばかりなので当然ながらいわゆるミステリーの型にはめられるものはない。解説に書かれている通り「ミステリアスな読み味の作品」が集められていて、バラエティに富んでいてなかなかおもしろい。

趣味の遺伝／夏目漱石
戦死した友人の墓に花を手向ける見知らぬ女の素性を求めて推理し心当たりを訪ね歩く。幕末のある藩の家臣の間の婚姻話から探り当てた。「趣味の遺伝」というのは「先祖の好みが子孫に伝わる」というような意味合い。寄り道が多くちょっと長めだが、やはり漱石の文章は味わい深く、よい。

魔睡／森鴎外
妻が医者に催眠術をかけられる。

范の犯罪／志賀直哉
曲芸師の男が事故に見せかけて妻を殺す顛末。

開化の殺人／芥川竜之介
殺人を告白する子爵の遺書。漢文書き下しのようなごつい文章で読むのに骨が折れた。でも読み応えがあった。

途上／谷崎潤一郎
会社からの帰り道に探偵から自分の罪を暴かれる。新しい女と結婚するために、命を縮めるような環境や食べ物や習慣を強制して最終的に病死に至らしめていた。

眉かくしの霊／泉鏡花
会話文も地の文も何やら省略が多い感じで、ちっとも意味が取れず読むのを断念した。

それを見た人達／川端康成
女の腐乱死体が見つかり、その死体の描写が非常に生々しい。しかし話は死体自体は目撃しなかった関係者の話で構成される。

犯人／太宰治
金を貸してくれなかった姉を手に掛けたダメ男の話。逃げ切れないと見て自殺するが、実は姉は死んでいなかった。

サラサーテの盤／内田百閒
死んだ友人の妻が、借りていたものを引き取りに時々訪れる。サラサーテが演奏するレコードも借りていたがその時は見つからず、別の日に届けに行く。友人の妻がとらえどころのない雰囲気で奇妙な味わいがある。

復讐／三島由紀夫
復讐を恐れてひっそりと暮らす一家の話。復讐を企む男が死亡したという電報を受け取って一時は安心するが、電報が真実とは限らないと気づくところで終わる。

2010/08/15

『魔睡』M42森鴎外･･麻酔をかけられている間に妻が医者に何かされた？夫の不安。『途上』T9谷崎潤一郎･･帰宅途中、探偵に呼び止められた。偶然を装ったはずの前妻殺人の種明かしを少しずつされる。『それを見た人達』S7川端康成･･腐乱死体が発見された。それを見た人々の胸中は。『犯人』S23太宰治･･貸間を断られて姉を刺した弟。逃げ惑った上、姉は軽傷だったと知らずに自殺。恋人と一緒にいられる部屋が欲しかっただけなのに。

古語調のものが多くて理解するのが大変だった。でもどれも短いのにうまい！って感じかな。

2010/06/16

イメージ参照(http://blogs.dion.ne.jp/kentuku902/archives/5149453.html)
(収録作品)復讐(三島由紀夫)/サラサーテの盤(内田百聞)/犯人(太宰治)/それを見た人達(川端康成)/眉かくしの霊(泉鏡花)/途上(谷崎潤一郎)/開花の殺人(芥川龍之介)/范の犯罪(志賀直哉)魔睡(森鴎外)/趣味の遺伝(夏目漱石)