世界へと滲み出す脳 の商品レビュー
作品の肌触りの経験を丁寧に言葉に置き換えていく表層批評を、映画・演劇・美術・アニメ・小説など多様な対象で実践する。脳を裏返していくようなデヴィッド・リンチ論には圧倒されるし、ウテナ論などもとてもいい。 清水崇・高橋洋・黒沢清を扱うホラー論における幽霊好き系と宇宙人好き系の比...
作品の肌触りの経験を丁寧に言葉に置き換えていく表層批評を、映画・演劇・美術・アニメ・小説など多様な対象で実践する。脳を裏返していくようなデヴィッド・リンチ論には圧倒されるし、ウテナ論などもとてもいい。 清水崇・高橋洋・黒沢清を扱うホラー論における幽霊好き系と宇宙人好き系の比較も面白い。幽霊好き系が「その場その場であらわれる齟齬、矛盾、亀裂を敏感に察知して形象化するが、謎に対して体系的な解を求める欲望は強くない」「謎とはそのまま世界のなまなましい感触」であるのに、「対して、宇宙人好き系は、世界を体系的に理解すること」を望んでおり、「隠された絶対的でオカルト的な体系への希求が先にあって、世界はその体系に従って強引に解釈され、その解釈の強引さによる歪み、世界そのものと解釈との摩擦の感触こそが作品化される」という(P62、例は疑史や陰謀論)。 この本では触れられてないけれど、シャマランなどは幽霊もの(『シックス・センス』)も宇宙人もの(『サイン』)もあるので、洋画も含めて考えてみると面白いと思う。 作品を「読む」ことへと挑発・啓蒙してくれる批評の良書だと思う。
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