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高城高全集(2) の商品レビュー

3.2

6件のお客様レビュー

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2015/07/28

2008年版このミスベスト10、10位の短編集(「荒蝦夷」って出版社発行の「X橋付近」)が絶版で入手困難(古本が高い!)なので、表題作を含んで、収録作品のほとんどが再収録されている本著で代替。これさえも買う気しなくて図書館で借りたけど。ってことで、1950年代後半~1960年代前...

2008年版このミスベスト10、10位の短編集(「荒蝦夷」って出版社発行の「X橋付近」)が絶版で入手困難(古本が高い!)なので、表題作を含んで、収録作品のほとんどが再収録されている本著で代替。これさえも買う気しなくて図書館で借りたけど。ってことで、1950年代後半~1960年代前半に書かれた短編集です。日本のハードボイルドのはしりらしい。まあ、古すぎるってのもあるけど、半分以上の作品が自分には理解不能で大部分の作品が何が面白いんだかさっぱりわからんです。雰囲気的にハードボイルドっぽいてのはわかるんですが、登場人物の設定も理解できなけりゃ、筋も追えない。読むのしんどいです。このミスの昔のやつはときどきこういうのがあったけど、最近のは普通っぽくなってきてるようだし、もうこういうのがベスト10に入ってきてないことを祈念いたします。

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2014/09/16

解説にもある通り、原石と評したくなる粗削りな作品群。酒の香りと、昭和の木造家屋の匂いを漂わせる、無骨な作風がいい雰囲気を作っている。ハードボイルドと銘打って世に出すことができた、ジャンルが若かった時代の特権とでもいうべき愚直なハードボイルド。

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2014/05/22
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

『X橋付近』 入院中同室になった松川精二から妹の様子を訪ねるように頼まれた高城。教えられた住所に妹の牧玲子はいない。ようやく探し当てた玲子。翌日再び来るように言われ訪れた高城か発見した玲子の遺体とヘロイン。 『火焔』 映画館で警察に包囲された不良たちの向こう見ずな行動。 『冷たい雨』 石原探偵事務所に依頼された殺人事件。被害者・木島小夜子の友人・冬村マリオを訪ねる石原。 『廃坑』 『淋しい草原に』 『ラ・クカラチャ』 『黒いエース』 『賭ける』 『凍った太陽』 『父と子』 『異郷にて 遠き日々』 『われらの時代に』 『親不孝の弁』 『Marini veddy,veddy dry.

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2013/05/05

 2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比...

 2008年に創元推理文庫の面目躍如とばかりに出版された高城高全集全四巻本の、これは第二巻。第一巻は、創作第一期(1955~1970年)に書かれたものでは唯一の長編小説『墓標なき墓場』。第二巻は、東北大文学部在籍中に『宝石』の懸賞に応募して一位を受賞した『X橋付近』を初め、当時比較的陽の当たった作品を収録しているようだ。  ちなみに第三巻『暗い海 深い霧』は、北海道を舞台にした短編を収録。とりわけタイトル通り、深い霧に包まれた、年間日照時間の最も短い街・釧路を舞台にした作品が大半を締める。未読の第四巻『風の岬』は、それらの範疇から外れた作品、陽の当たらなかった作品などをまとめたものであるようだ。  本書は、デビュー当時、即ち1957年の北海道新聞社入社以前の仙台在住頃の作品に加え、北海道を舞台にした作中有名なもの、シリーズものなどを収録している。  シリーズものとは、いわゆる悪女ものである。志賀百合というクールな謎の美女の出る四作は注目。特にフェンシングを得意としていたらしい作者らしく、フェンシング試合中の事故の真相と疑念の『賭ける』に始まり、札幌を舞台にした『凍った太陽』、ヘミングウェイがリヨン駅で盗まえたという原稿の行方に絡んだミステリ『父と子』、スペイン、バスク地方を舞台にした『異郷にて 遠き日々』と通して、志賀百合という死に囲繞されたような宿命を持つ女性の、波乱と冒険に満ちた一代記を見ることができ、興味深い。  さらに私立探偵小説としてシリーズ化を望みたくなるような『冷たい雨』。珍しく私立探偵が登場するのだが、石原次郎という閑古鳥が鳴いているような事務所に始まる厭世観に満ちたような空気が、何だかフィリップ・マーローみたいで、懐かしい。昭和30年代ならではの殺伐感と戦後への期待感が交錯したぴりぴりした街の気配が、鋭い文体で抉られる。  実際、この本は、釧路をはじめとした道東旅行中に読んだのだが、『美しい草原に』はその釧路のバーを舞台にしたまるで日活アクション映画みたいだ。  さらに『ラ・クカラチャ』という短編は、米軍占領下の街で、最底辺の生活と生存を描くハードボイルド。ラ・クカラチャがゴキブリの意味だとわかったのはこの短編により、それをハワイ旅行の折、妻に話しながら、ラ・クカラチャは英語に化けた時にコックローチになったんだ、と気づいたりした。  という具合に私的には、自分の私生活とも関わって忘れがたき短編集となったものである。

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2012/05/07

日本ハードボイルドの黎明期を支えた作家・高城高の 名編11編にエッセイ3編を収録した作品集。 入院中、同室となった男に、盛り場で雀荘を経営する妹の安否を 確かめてほしいと頼まれた私は、彼女を追い調査をするが、 会う約束を取り付け、時間に訪れた私の前に 彼女は死体となっ...

日本ハードボイルドの黎明期を支えた作家・高城高の 名編11編にエッセイ3編を収録した作品集。 入院中、同室となった男に、盛り場で雀荘を経営する妹の安否を 確かめてほしいと頼まれた私は、彼女を追い調査をするが、 会う約束を取り付け、時間に訪れた私の前に 彼女は死体となって現れ――「X橋付近」。 不良少年たちの、包囲された映画館からの脱出劇「火焔」。 私立探偵の石原が久々に受けた依頼は、 木島という男の妹が殺された事件の調査。 その陰には市会議員とキャバレー経営者の女が――「冷たい雨」。 荒れ果てた炭鉱に住む家族の肖像「廃坑」。 不自然な難破事件の真相を調べるべく釧路に向かったまま 消息を絶った幼馴染を追い、男は釧路に向かう「淋しい草原に」。 日本人娼婦と米兵の、炎熱の夏の悲劇を描く「ラ・クカラチャ」。 バーテンやクラブ経営者らの思惑が絡み合い、 カード賭博の場で起きた惨劇「黒いエース」。 フェンシングの試合中に起きた事故で命を落とした男と、 志賀由利という女の悲しき関係――「賭ける」。 フェンシング事故で親友を失った岡田は、 映画スターのスキャンダル事件に巻き込まれるが、 そこで志賀由利と再開を果たす「凍った太陽」。 北海道の地で、アメリカ人と何らかの取引を目論むパリのギャング。 由利はギャングに付き添いながら、取引の場で 品物を強奪することを仲間と企むが「父と子」。 年老いた男は、かつて若き日にスペインの地で関わった 独立を求め活動するバスク人たちの間で起こった事件と、 志賀由利という女について語り始める「異郷にて 遠き日々」。 そして高城氏のハードボイルド感が直接的に語られたエッセイ 「われらの時代に」「親不孝の弁」と、 ドライ・マティーニにまつわる 若き日の思い出を綴った「Martini. Veddy, veddy dry」。 2008年版「このミステリーがすごい!」に、 短編集「X橋付近」がランクイン後、刊行された全集の第2巻。 硬質かつ鋭敏な文体は、第1巻「墓標なき墓場」と変わらず。 手数は少ないものの的確な筆さばきで、 鮮やかに景色を、人間を、心情を刻みつけていく。 ほぼすべての作品が、北の地を舞台としている。 冷え冷えとした土地の空気が、 荒涼としたハードボイルドにはよくなじむ。 一方で、燃え上がるような暑さの夏を舞台とした作品もあり、 こちらも、登場人物たちの寂寥感、頽廃的な雰囲気とよく合う。 結果として、不思議な冷たさと熱とが同居する作品集となっている。 最後に収録されたエッセイ3編も短いものながら、 高城氏の作品を支える思想背景が述べられており、 作品の味わいを深める効果を発揮している。 良作揃いの作品集。 一冊としては結構なボリュームだが、 少しずつ読み進められる各作品のコンパクトさもありがたい。 全集はあと2巻あり、どちらも購入済み。 焦ることはないので、しばらくしたら第3巻を読んでみよう。

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2011/11/17
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

 日本ハードボイルドの黎明を飾った、著者デビュー作「X橋付近」をはじめとした短篇、エッセイ集。「X橋付近」は1958年に発表され、江戸川乱歩に評価されたそうだ。高城高は大藪春彦、河野典生と並び、三羽烏と呼ばれた日本のハードボイルド小説の嚆矢である。戦後の傷跡、陰影にうごめく人々をクールな視点から描いている。絶望し退廃した闇の中に一条の光を見た気がした。洗練され娯楽性を高めた現代作品に比べれば、ごつごつとした無骨な作品であることは否めない。しかし、黎明期の日本ハードボイルドの核となった作品という評価には頷ける。本書の解説にあるように、<原石の輝き>を窺えたからである。特に、志賀由利という女性を主人公にした連作4篇は良かった。読んでいるときに、彫刻家が一心不乱に鑿を振るう制作の過程を思いが及んだ。この作品集に収められた短篇も、日本ハードボイルドという彫像を彫り始めたばかりのころの作品。まだ、削らなければならないところ、もっと細かい彫りを刻まなければならないところ、やすりをかけ滑らかにしなければならないところがある。そんな荒削りな作品である。「X橋付近」」発表から50年を経た現在、このようなプリミティブで記念碑的存在の作品を読むことは辛いことが多い。緻密なプロット、大胆な展開、その他あらゆる面で現代作品が進化を遂げているからだ。そんな現代作品に慣れ親しんでいる読者は戸惑うに違いない。本書のような作品は、日本ハードボイルドの原点を知りたいという学究的な読者のもの。それ以外の、読書は娯楽という方は読まない方がいいかもしれない。最後に、著者のハードボイルド文学志向は、ヘミングウェイ、ハメットに始まるあの独特なスタイル(文体)を日本語で追求することに始まったそうだ。

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