体系的哲学者キケローの世界 の商品レビュー
著者がどれほど西洋古代哲学を研究しているかはその分量や著作量でわかる。なんといっても注がたくさんある。ひとつの注で複数ページにわたるのははじめてみた。 キケローの哲学というものを研究・勉強するという点では本書は大いに価値あるものであると思う。しかし、哲学議論としては疑問点が残...
著者がどれほど西洋古代哲学を研究しているかはその分量や著作量でわかる。なんといっても注がたくさんある。ひとつの注で複数ページにわたるのははじめてみた。 キケローの哲学というものを研究・勉強するという点では本書は大いに価値あるものであると思う。しかし、哲学議論としては疑問点が残るものがあった(私は哲学に関しては素人ではあるが)。というのも、自論ありきでそれの援用として史料や先行研究の文言を用いているようにみられ、西洋古代哲学における本著の位置づけが明確に見えてこなかった。ただ単に「キケローは中途半端な哲学者ではなく、ギリシャ哲学を師としながらも、いわば『ローマ哲学』を打ち立てた体系的な哲学者であったのだ。」ということだけが言いたかったのかな、と思わせてしまいかねない著作だった。 角田氏のキケロー哲学に関する奥深い研究成果をより相対的に表現できていれば本著の価値はより大きなものとなったのではないかというのが素人目から見た私の感想である。しかし、まだ読解し切れていない部分も多々あるので、またレビューは書き直すことになるかもしれない。
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