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<世界>の輪郭 の商品レビュー

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2018/07/02

本作では、島田雅彦や村上春樹らの作品を手掛かりに、現代文学の変質についての考察が展開されています。著者は、かつて「私」の内面と世俗的な「家」や「性」の規範とが鋭く対立するものとして理解されており、文学はそのあいだの矛盾に切り込むことで「私」と「世界」との関係に斬り結ぶことができた...

本作では、島田雅彦や村上春樹らの作品を手掛かりに、現代文学の変質についての考察が展開されています。著者は、かつて「私」の内面と世俗的な「家」や「性」の規範とが鋭く対立するものとして理解されており、文学はそのあいだの矛盾に切り込むことで「私」と「世界」との関係に斬り結ぶことができたと考えています。しかし現代の作家たちは、そうした伝統的な「内面」のリアリティをうしなっており、そうした彼らの世界認識がポストモダン思想によって広められることになった世界のイメージとかさなりあっていると主張しています。 そのうえで著者は、柄谷行人や蓮實重彦、あるいはそのエピゴーネンとされる批評家たちから距離をとりつつ、そうした世界についてのイメージをくり返し再演して見せることには意味がないと主張し、小林秀雄や吉本隆明らの仕事に言及しつつ、むしろわれわれは生活世界のなかでみずからの欲望を育て上げているという実存的な基点に目を向けようとしています。 『現代批評の遠近法 夢の外部』や『世界という背理 小林秀雄と吉本隆明』(ともに講談社学術文庫)と同様のテーマをあつかっており、併せて読むことで著者の問題がより明確に見えてくるのではないかと思います。

Posted byブクログ