ALCBANE(1) の商品レビュー

衣谷遊(著者)

2009/10/04

なんともまあスタイリッシュなヒーローが生まれたものだ。
主人公が天才児なのはまあよくあることとして、コンピュータにまで敬語を使うジェントル節がまずたまらない。優男でありつつ達観したかのような素顔でもう一乗せ、おまけに後半ナイスメガネとくればKOであろう。衣谷遊の描く美男は奇妙な絵的説得力がある。
加えて圧倒的に３次元的なコスチューム！　作者と読者の立体把握能力の限界に挑むがごときSPARCマスクのデザイン、常時複雑な空間戦闘をするアーム！　もしこれがアニメになれば作画家は確実に悲鳴をあげるだろう。HXLがアニメになんて絶対ならないだろうから杞憂だけどさ！

石和教授のやりすぎたダンディズム溢れすぎるファッションも衣谷絵にかかれば素直にかっこいい。うん、よく考えたらこの巻紳士しか出てないな。紳士対紳士の戦いは感情などではなく理性的な判断と近代的な取引によって決着するのだ。素晴らしい。

こうなるともはや三ノ輪記者の巨乳と存在感がものすごく空しいものになってしまうのだが、仮にもロイス・レーンばりのブン屋ヒロインがこれでいいのだろうか。いや、もしかするともうひとつの本筋である10年後を見越して、ヒロインがさほど若々しくなくなった姿を見せないようにという歪んだ親心なのかもしれないが。